日本原子力産業協会 今井会長 年頭所感

2021年1月5日


新年明けましておめでとうございます。
皆さまにおかれましては、良き新年をお迎えになられたこととお慶び申し上げます。

昨年来、新型コロナウイルスの影響で様々な行事の中止・延期が続いておりますが、例年実施しております当協会主催の「原子力新年の集い」につきましても、本年は現下の感染拡大の状況を踏まえ、中止とさせて頂きました。世界的には、ようやくワクチン接種を開始した国が出て来ておりますので、安心して事業ができる環境が早く整うことを願っております。
 

さて、近年は従来の自然災害に加え、海水温上昇による水蒸気の増加によって、豪雨・長雨・洪水などが頻発するようになりました。その要因と言われている温室効果ガスの削減は最重要課題です。昨年、菅内閣は2050年までにカーボンニュートラルを実現すると宣言いたしましたが、この実現には発電時に温室効果ガスを排出せず、安定した電力供給が可能な原子力発電の活用が必要不可欠であります。

また、我が国は天然資源に乏しく、一次エネルギーの大部分を海外からの輸入に依存しております。エネルギー自給率は10%台にとどまっており、この改善のためにも、原子力発電を積極活用していくべきであることは言うまでもありません。

しかしながら、現在までに再稼働を果たした発電プラントは未だ9基にとどまっております。2030年度のエネルギーミックスとして、20~22%を原子力発電で担うことが我が国の当座の目標となっておりますが、稼働基数は圧倒的に不足しているのが現状です。将来的なカーボンニュートラル、並びにエネルギー自給率の向上を実現する意味でも、可能な限り早期に残るプラントの再稼働を果たすとともに、新設・リプレースに向けた取り組みも強力に推進させていかねばなりません。また、2050年に向けた「グリーン成長戦略」の中では、小型モジュール炉の開発に向けた国際連携等について言及されております。次世代革新炉の技術開発面においても、国際的な潮流から取り残されないよう、原子力産業界全体で連携を深めていくことが肝要であります。

こうした原子力の活用を着実に進めていくためには、原子力の位置付けを明確にする国としての政策立案が極めて重要となります。足もと、次期エネルギー基本計画の策定に向けた議論が始まっておりますが、この中で、将来にわたる原子力の利用推進が明確に示されることが必要です。
 

原子力の有効活用に向けては、原子燃料サイクルの早期確立も欠かすことが出来ない要素です。昨年、六ヶ所村の再処理工場等の一連の施設について新規制基準への適合が認められましたが、原子燃料サイクルの構築は、エネルギー資源を自国産化することであり、必ず実現させなければならない事業であります。引き続きこれらの施設の竣工に向けた取り組みが、着実に進められることを願っております。

また、高レベル放射性廃棄物の処分事業も、国や原子力発電環境整備機構(NUMO)を中心に前進しつつあります。昨年、廃棄物の地層処分に関する文献調査の実施が北海道寿都町、及び神恵内村で決まりましたが、地域住民の理解を得ながら、国とNUMOの取り組みが一層進展することを期待しております。
 

原子力に関する一連の取り組みの中で、人材育成についても長期的な視点が求められるテーマであります。優秀な人材は魅力ある産業に集まります。技術開発から建設、運転、保全にわたって、産・官・学が連携して、原子力産業の魅力に磨きをかけ、我が国の原子力イノベーションを一層推進いただきたいと思います。
 

今年で福島第一原子力発電所の事故から10年が経過いたします。この間、復興・再生へ向けた取り組みは着実に進展をして参りましたが、放射線への不安や福島の産品に対する風評被害など、解決すべき課題は今なお残っております。

原子力産業界としては、原子力発電の更なる安全性向上に取り組んでいくことは勿論のこと、一方で、社会に対して原子力の正しい価値を発信し、国民の皆さまからの理解と信頼を得るため、たゆまぬ努力を続けていく必要があります。

日本原子力産業協会といたしましても、これらの取り組みを後押しすべく、会員の皆さまを始めとする関係者のご支援を頂きながら、原子力産業界全体の発展に資する事業に全力で取り組んでまいります。最後となりますが、皆さま方の更なる発展、益々のご健勝、ご多幸を祈念致しまして、年頭のご挨拶とさせて頂きます。

以 上

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