日本原子力産業協会会長 年頭挨拶
一般社団法人 日本原子力産業協会
会長 三村 明夫
新年あけましておめでとうございます。日本原子力産業協会会長の三村でございます。
年頭にあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。
まず、元日に発生いたしました令和6年能登半島地震により亡くなられた方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被災された多くの皆様に心よりお見舞いを申し上げます。また、余震や厳しい天候の中で、医療・救援活動やライフラインの復旧にご尽力いただいている皆さんに心より敬意を表します。
電力の復旧については北陸電力さんを中心に多くの送配電事業者が応援に入っておられますが、安全には十分留意され、安心の灯を早く点していただければと思います。
さて、昨年12月のCOP28では、COP史上初めて公式成果文書において、温室効果ガス排出削減の重要な手段として原子力が明記されました。
長年、原子力は残念ながら環境議論の中で忌避されてきましたが、原子力が「クリーンエネルギー」としての地位を世界的に確立したことは、我々原子力産業界にとって大きな節目であり、社会から原子力が受け入れられる受容性向上への大きな一歩となりました。
日本政府もG7議長国として重要な役割を果たしました。とりわけ、エネルギー・環境大臣会合やG7広島サミット、そして今回のCOP28における岸田総理のご発言は、原子力の価値を世界が再認識する重要な契機となりました。
これらの努力は、25か国による「原子力3倍宣言」に結集され、原子力発電の拡大を目指す国際的な動きを加速させています。
原子力産業協会といたしましても、世界各国の原子力産業団体と緊密に連携し、政府間の活動を支え、NZN(ネット・ゼロ・ニュークリア)イニシアティブを通じて側面から支援して参りました。本日ご出席の皆様には、スポンサー、サポーターとしてご支援いただきましたことに深く感謝申し上げます。
国内においても、エネルギー安全保障と脱炭素効果を重視した政策が進展しております。昨年2月の「GX実現に向けた基本方針」、それに続く「GX脱炭素電源法」の国会決議や、「今後の原子力政策の方向性と行動指針」の決定など、原子力を最大限活用する方針が明確に示されたことは大きな前進でありました。
本年策定が見込まれる「第7次エネルギー基本計画」は、原子力の位置付けが明確化され、原子力の再興が確かなモメンタムとなる上で、極めて重要な基本計画であります。
このように、国内外で原子力を推進・活用しようとする機運が醸成される中、この期待を具体的な行動や成果として結実させることが、今強く求められています。
再稼働については、本年いよいよ初のBWRプラントの再稼働が見込まれております。
エネルギー基本計画に示された目標を達成するためには、これらに続く更なる再稼働を全力で進めていかねばなりませんが、それだけでは十分でありません。
我が国のエネルギーを持続的に支えていく上で、原子力発電プラントの新規建設が、欠かすことの出来ない大変重要な要素となっております。
新規建設は、原子力に係るあらゆる人々に夢と希望を与え、将来への技術継承、人材の確保・育成、サプライチェーンの維持に大きく貢献するものであります。
しかし、現下の自由化された電力市場においては、投資回収に長期間を要する原子力への投資判断は容易ならざるものがあります。
原子力事業者、並びに政府は、共に現在および将来における電力供給に対する責任を負っております。
政府におかれては、原子力事業者が高い予見性をもって投資判断が出来るような事業環境整備を是非ともお願いしたいと思いますし、その実現に向けた具体的な制度的措置については、我々原子力産業界としても、声を大にして発信・リクエストしていく所存であります。
原子力産業を持続的に支えていく上で原子燃料サイクルの整備も極めて重要であります。昨年、日本原燃六ヶ所濃縮工場が6年ぶりに生産運転を再開いたしました。サイクルの要である再処理工場の竣工も本年予定されているところであります。
また、中間貯蔵施設については、青森県むつ市のリサイクル燃料貯蔵株式会社が本年の操業開始を予定しているほか、山口県上関町においては、立地可能性についての調査を受入れていただきました。
高レベル放射性廃棄物の安全な地層処分についても、北海道の寿都町と神恵内村のご協力をいただきながら文献調査が進められています。
こうした各事業に対する地元の皆様のご理解とご協力に感謝申し上げるとともに、当協会といたしましても、それぞれの事業の意義について、あらゆる方策を尽くし、広く国民理解の促進に尽力して参ります。
原子力のエネルギー利用と同等の重要性を有する医療、工業、農業などの放射線利用分野においても、がん治療を含めた様々な方面で一層の可能性の広がりが期待されています。
工業利用、農業利用等、原子力の多様な価値や広範な利用についても、広く発信して参りたいと思います。
最後になりますが、私たちが将来にわたって原子力を最大限活用していくには、常にたゆまぬ安全性向上を図りつつ、山積する様々な課題に対し、本日お集まりの皆さまをはじめ、国と事業者が一丸となって取り組むことが必要不可欠です。
当協会といたしましても、その一助となるべく全力を尽くして参る所存ですので、皆さま方の倍旧のご支援・ご協力をお願い申し上げ、私からの新年の挨拶とさせて頂きます。
以 上
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