日本原子力産業協会会長 年頭挨拶
一般社団法人 日本原子力産業協会
会長 三村 明夫
皆様、あけましておめでとうございます。この新年の集いにこれだけ多くの方々にご参加いただき、熱気あふれる集いとなりましたことを心から感謝申し上げます。
昨年は、原子力を巡る様々な重要な出来事がございました。
国際的に見れば、ロシアによるウクライナ侵攻あるいは、中東情勢の混乱の長期化、これはエネルギーを巡る不確実性を増大させ、世界各国ではエネルギー安全保障を最優先課題とするなど、大きな影響を与えています。
一方、新興国の発展は、電力需要の増加をもたらし、あるいは生成AIやデータセンターの事業規模の拡大が、電力需要を大幅に増加させると見込まれており、経済的で安定したベースロード電源が強く求められているところです。
3月にはベルギーのブリュッセルで、原子力に特化した初の首脳会議「原子力エネルギー・サミット」が開催され30か国以上が参加しました。
9月にはパリにおいて、OECD諸国から26か国が参加し、新規建設実現を促進するための会議が開催されたほか、ニューヨークで開催された気候イベントでは世界的に有力な金融機関14社が原子力への支持を表明しました。
さらに、11月、アゼルバイジャンのバクーで開催されたCOP29では、2050年までの原子力3倍宣言に新たに6か国が加わり、31か国が署名するなど、エネルギー安定供給と脱炭素の両立を可能とする原子力活用のモメンタムがさらに拡大しています。
国内へ目を向けますと、11月に東北電力女川2号機、12月には中国電力島根2号機が再稼動しました。女川2号機は、東日本大震災被災地のプラントで、東日本初、また沸騰水型軽水炉初の再稼働となります。この2基を加えて再稼働したプラントは合計14基となりました。とりわけ、震災後初のBWRの再稼働は、我が国の原子力サプライチェーン維持・強化や人材育成にとっても極めて大きな意義を持つものであり、再稼働にご理解をいただいた地元の皆さまと、東北電力ならびに中国電力、両社をはじめとする関係者の皆さまの努力に感謝と敬意を表したいと思います。原子力産業界としては、今後も、総力をあげて再稼働を推し進め、我が国の電力安定供給の強化と脱炭素に大きく貢献し、プラントが動く際の感動を、次世代を担う若者たちにもしっかり受け継いでいきたいと考えております。
バックエンド関連では、高レベル放射性廃棄物の地層処分について、5月に佐賀県玄海町が処分地選定に向けた文献調査の受入れを表明し、調査が開始されました。11月には、かねてより文献調査が進められてきた北海道寿都町と神恵内村に対し調査報告書が提出されました。高レベル放射性廃棄物の最終処分は、原子力を活用していくうえで最も重要な課題の一つであり、国が前面に立ち推進することを強く期待しています。
持続的に原子力を利用するには、原子燃料サイクルの整備も極めて重要であります。11月には、青森県むつ市において国内初の中間貯蔵施設であるリサイクル燃料貯蔵株式会社のリサイクル燃料備蓄センターが事業を開始した一方で、サイクルの要である再処理工場の竣工が2026年度に、また、MOX燃料工場の竣工が2027年度に延期されました。今年はまさに正念場であり、日本原燃と関係各社は、力をあわせてこれらの事業を前に進めていただきたいと思います。
福島第一原子力発電所事故の真摯な反省は、我々原子力産業界が事業を進めていくうえでの原点であります。廃炉については、ALPS処理水の着実な海洋放出が安全に継続されているほか、11月には燃料デブリの試験取り出しの成功といった進展もありました。廃炉最難関の作業に向け一歩を踏み出しているところですが、今後も安全確保を第一に、着実な進展を期待しています。
エネルギー政策面では、昨年5月から安定供給、コスト、安全確保、革新技術、事業環境整備など実に多くの分野に関し、国の様々な審議会において議論が進められてきました。
中でも、昨年末に示された次期エネルギー基本計画(案)において、原子力の「最大限活用」が明記され、原子力の依存度低減が削除されたことは、たいへん意義深いことであります。また、次世代革新炉の開発・設置についても記載されました。新規建設の必要性が明確に示されたことは、原子力産業界にとっては力強い推進力になるものです。新規建設は、技術継承、人材の確保・育成、サプライチェーンの維持・強化といった喫緊の課題解決にとって必要不可欠なものであり、かつ、我が国の将来を担う若者たちに夢と希望を与えるものであります。原子力産業界としては最大限の力を結集し、これを実現していかなければなりません。
そのためには、原子力事業の特徴である初期投資の大きさと、長期にわたる事業期間、そしてそれらに起因する投資回収の不確実性の克服に向けて、次期エネルギー基本計画(案)で明記された、政府による「事業環境の整備」が欠かせません。この具体化をどのように進めるかが、我が国の大きな課題であると思います。
加えて、先ほども申し上げたサプライチェーンや人材育成など、待ったなしの課題にも同時に向き合い、速やかに最適解を出していくことが必要です。当協会では、来年度の事業方針を「新規建設実現の推進と促進」とし、4月開催予定の第58回原産年次大会におけるメインテーマとすることに致しました。
こうした山積する課題に取り組み、将来にわたって原子力を最大限活用していくには、本日お集まりの皆さまのお力を結集し、国と一丸となって取り組むことが必要不可欠です。
当協会としても、その一助となるべく全力を尽くして参る所存ですので、皆さま方の一層のご支援・ご協力をお願い申し上げ、私からの新年の挨拶とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。
以 上
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