2018年の年頭にあたり

2018年1月5日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 高橋 明男

 新年明けましておめでとうございます。
 わが国のエネルギー政策の基本となる「エネルギー基本計画」の見直し検討が昨年より開始され、並行して2050年を見据えた上での議論も進められております。3E(安定供給、地球環境、経済性)の観点から原子力発電の役割、重要性は変わらないと考えています。その役割を果たすためにも再稼働を着実に進めることが必要ですし、更なる安全性の向上、原子燃料サイクルの確立、放射性廃棄物処分、人材の確保・育成や海外展開などの諸課題に産業界一丸となって取り組んでいかなければなりません。
 2018年の年頭にあたり、当協会の本年の取り組みについて、4点述べたいと思います。

<福島復興支援>
 福島第一原子力発電所の事故から約7年が経過しますが、未だに5万人以上の方々が避難を余儀なくされています。避難指示の解除やインフラ整備は一定の進展が見られますが、避難地域の生活環境整備、福島県産品に対する風評被害・風化防止対策など、国を挙げて取り組むべき復興への課題が山積しています。
 また、福島第一原子力発電所の廃止措置については中長期ロードマップに従い汚染水対策、1~3号機の使用済燃料プールからの燃料取り出しや溶融デブリの取り出しに向けた準備等が着実に進んでいますが、トリチウムを含む浄化水の扱いが大きな課題として残されています。
 当協会では復興に向け地域の皆さまに寄り添った活動を継続していくとともに、福島の復興、廃止措置状況の情報発信や放射線の理解に向けた活動に取り組んでまいります。

<原子力発電に対する理解の促進>
 昨年末に東京電力柏崎刈羽原子力発電所6,7号機でBWRとして初めて新規制基準に基づく原子炉設置変更が許可されました。PWRとBWRの両タイプについて先例が出来たことになりますので、これまでの経験がいかされ今後の審査が円滑に進むことを期待しています。
 昨年3月に大阪高裁において高浜3,4号機の運転差止めの仮処分取り消しの判決がだされましたが、一方で火山事象の影響による危険性についての原子力規制委員会の判断が不合理であるとして、12月には広島高裁により伊方発電所3号機の運転差し止め仮処分が決定されました。新規制基準の厳しい審査に合格し運転再開となったプラントに対する判決であり大変残念ですが、異議審で運転再開の判断がなされるよう、この教訓を活かし対応しなければなりません。
 原子力発電所のみならず、原子燃料サイクルや高レベル放射性廃棄物の処分等の諸課題についても国民に広くご理解を頂く必要があります。
 当協会ではこれまで築き上げた多種多様なネットワークを活用し、原子力発電の必要性や諸課題に関する理解促進に資するため、産業界の立場から提言や情報発信に努めてまいります。

<国際協力>
 福島第一原子力発電所の事故の教訓や運転・保守等から得られる知見などを国内外で共有し、世界の原子力安全の向上に役立てることは、事故の当事国として重要な責務であります。また、福島第一原子力発電所事故後も世界の多くの国々で原子力発電の導入、拡大が進んでおり、日本の高品質な原子力技術には海外から高い期待が寄せられています。原子力技術の海外輸出を通じ、世界の原子力平和利用に貢献するとともに、停滞する国内の原子力産業が活性化し原子力技術の更なる向上や国の成長戦略に寄与していくことが望まれます。
 当協会では、アジア近隣諸国をはじめ欧米諸国との2国間会合や原子力産業フォーラムを開催し、原子力安全の一層の向上と会員企業と海外の産業界とのビジネス交流を図っています。
 こうした海外諸国との交流機会や構築したネットワークを活かし、福島の状況の情報発信や日本の原子力産業の国際展開に資する取り組みを進めてまいります。

<人材確保・育成>
 これからも原子力発電を活用していくためには継続的な人材の確保・育成が不可欠です。
 教育の視点では、昨年、近畿大学原子炉や京都大学原子炉が新規制基準の下で運転を再開しました。教育研究用原子炉を使った学生への教育が以前の水準で行えるようになったのは大変喜ばしいことですが、福島第一原子力発電所の事故以降続いている原子力産業への就職を目指す学生の減少傾向は未だ改善されたとは言い難い状況にあります。
 当協会としては、原子力発電所の運転・保守を安全に行っていくことが社会への貢献であることや、福島第一原子力発電所の廃炉や安全性向上に向けた研究・開発はやりがいのある挑戦であることの理解を高めて貰えるように努力、工夫を重ねるとともに、将来の原子力業界、エネルギー業界において活躍できる人材を確保・育成するため、国内外の関係組織と連携しながら様々な取り組みを展開してまいります。

 今春には関西電力大飯発電所3,4号機及び九州電力玄海原子力発電所3,4号機が順次再稼働することが期待されています。また、新規制基準の下、昨年末にBWRで初となる設置変更が許可されたことから審査の進展に弾みがつくことが期待されています。
 当協会としましても皆様方からのご支援を頂戴しながら再稼働の進展や原子力の理解促進、国際協力、人材確保・育成等に貢献できるよう全力で取り組んでまいる所存です。

以 上

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