2023年の年頭にあたり

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 新井 史朗

新年明けましておめでとうございます。

昨年は、化石資源への投資低迷、新型コロナによる経済停滞からの回復で、エネルギー需給の逼迫と価格高騰が生じる中、ロシアのウクライナ侵攻により、この傾向に一層の拍車がかかりました。また、11月に開催されたCOP27では、「1.5℃目標」の達成のために気候変動対策のさらなる強化が必要とされました。

このような状況のもと、フランス・英国・ポーランド等において原子力発電プラントの新規建設が表明され、ベルギーや米国の一部の州においては原子力発電プラントの廃止が延期されるなど、各国で既存の政策が見直されています。国際エネルギー機関(IEA)は2050年には原子力の規模は世界的に倍増すると予測しており、脱炭素電源である原子力の安定した供給力が再び高く評価されています。

わが国においては、昨年12月、首相が議長を務めるGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で、「GX実現に向けた基本方針(案)」が示されました。原子力については、わが国のエネルギー安定供給確保とカーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギーと共に、エネルギー安全保障に寄与し脱炭素効果の高い電源として最大限活用することが明記されました。原子力産業界は、原子力発電所の早期再稼働、運転期間の延長、次世代革新炉の開発や建設、バックエンドプロセスの加速化など、それぞれの課題について、安全確保を大前提に、国民の皆様の理解が得られるよう、産業界としての責務をしっかり果たして行く必要があります。

2023年の年頭にあたり、当協会の本年の取り組みについて4点を述べたいと思います。

<原子力発電に対する理解の促進>
原子力の最大限活用には、原子力が持つ3つのEの価値、すなわち安定供給、経済効率、環境への適合のそれぞれに優位性がある事や、原子燃料サイクルの重要性、事業者の安全性追求への取り組み等について、多くの方々に知っていただくことが肝要です。
当協会はマスメディアとの対話や、各種ツールを使った情報発信を通して、原子力が持つ価値のアピールに取り組むとともに、 関係組織との連携や、立地地域における活動等を通じた双方向の理解活動に取り組んでまいります 。また、国内外の原子力を取り巻く情勢を調査・分析し、原子力の最大限活用に向けた産業界の課題等について、意見・提言を発信してまいります。

<福島復興支援>
福島第一原子力発電所の廃止措置と福島復興への支援に真摯に取り組んでいくことが欠かせません。廃止措置の進捗、ALPS(多核種除去設備)処理水の海洋放出などへの正しい理解の普及のため、福島に関する情報の発信、現地見学の実施、福島物産の紹介や販売協力などを通じた情報発信等に取り組んでまいります。

<人材確保・育成>
原子力産業の持続的な維持・発展を支えるためには、幅広い分野において、継続的な人材の確保と育成が欠かせません。若い世代に原子力が夢とやりがいのある魅力的な産業であることを知ってもらい、産官学連携のもとに、国全体として整合性をもって効率的、効果的かつ戦略的に育成活動を進めることが重要です。
原子力産業界の人材確保を支援するセミナー開催等の取り組み、及び原子力人材育成ネットワークを通じて、原子力人材の確保と育成への取り組みを進めてまいります。

<国際協力>
近年、エネルギー安定供給や気候変動問題への対応など原子力の持つ貴重な価値に世界的な注目が集まっており、世界各国で新規建設プロジェクトが検討されています。高い技術と品質で定評のあるわが国の企業が海外のプロジェクトに参加できれば、技術力の維持・強化とともに、世界の原子力発電所の安全性向上にも寄与できます。
当協会は、諸外国・地域と連携し共通課題に対応するための情報・意見の交換の実施、わが国の原子力産業振興の一助となる情報発信やビジネス交流の実施を行ってまいります。また、諸外国や国際機関との協力を通して、原子力の価値の共有、原子力のプレゼンス向上に取り組んでまいります。

当協会は、会員の皆さまとともに原子力産業の諸課題解決に向けた取り組みを全力で進めてまいります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

以上

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