福島第一原子力発電所ALPS処理水の処分に係る計画の認可について
一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 新井 史朗
7月22日、東京電力福島第一原子力発電所ALPS処理水の処分に係る計画について、原子力規制委員会の認可が決定した。
ALPS処理水については、国の専門家会議が海洋放出の他、地層への注入や大気放出など5案を検討し、拡散予測や放出後のモニタリングのしやすさなどから海洋放出が現実的と評価し、2021年4月に政府が規制基準の厳格な遵守と、風評影響を最大限抑制する対応の徹底を前提に、福島第一原子力発電所から海洋放出する方針を決定した。この決定を受けて、東京電力が2021年末に本計画を申請していたものである。
計画の内容は、トリチウム濃度が国の規制基準6万Bq/Lの40分の1未満となるよう海水で希釈し、海底トンネルを通じて沖合1キロで放出するというもので、政府方針決定から2年程度後の処分開始に向け当設備を完成させる工程である。審査の過程では、原子力規制委員会が13回の会合を経て入念な確認を行ったが、国際原子力機関(IAEA)もそのプロセスを検証し、妥当であると認める報告書を公表している。
ALPS処理水はトリチウム以外の放射性物質の大部分を取り除いた水である。トリチウム自体は身の回りに水の形で広く存在しており、宇宙から降り注ぐ宇宙線により日々あらたに生成され、雨水や河川、水道水の中にも含まれている。
前述のとおりALPS処理水は日本の規制基準の40分の1以下となるように大量の海水で放出前に希釈されるため、環境への影響は規制当局が定めた上限より大幅に低くなることがIAEAの報告書でも明言されている。本報告書を作成したIAEAのタスクフォースには、世界から選ばれ国際的な経験を有する幅広い専門家が加わっており、専門家による十分に科学的で透明性のある検証が行われている。さらにモニタリングについても、政府がIAEAの継続的な協力を得ながら、海水や水産物のモニタリングの強化・拡充を図ることになっている。
このように権威ある国際機関による客観的な検証が行われたうえで、規制当局から同計画に対する認可が出されたことについて、広く社会に発信されることが重要である。
本計画の開始に向けて、東京電力には、安全、確実な工事の遂行を望みたい。また事業者はもとより国も環境影響についての対応を分かりやすく丁寧に説明を続けるとともに、国内外に向けては風評の防止のために理解醸成ならびに懸念の解消に努めていただきたい。
当協会も継続的に正確な情報の提供と理解促進に努めてまいりたい。
以 上
<参考>
〇審査書(原子力規制委員会ウェブ)
https://www.nsr.go.jp/data/000398639.pdf
〇IAEA中間報告書(経済産業省ウェブ、外務省ウェブ)
https://www.meti.go.jp/press/2022/04/20220429002/20220429002-2.pdf
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press3_000853.html
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press3_000867.html
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