第40回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会における増井理事長発言内容
一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 増井 秀企
2024年8月20日開催の第40回原子力小委員会において、増井理事長より専門委員として以下の発言を行いました。
日本原子力産業協会は、約400団体の会員を有しております。これら会員の代表として発言いたします。
原子力の技術伝承、人材確保・育成、サプライチェーン維持の観点から、産業界の最も強い声は原子力プラントの新規建設であります。半導体工場やデータセンターの増加、鉄鋼業や製紙パルプ業の脱炭素化、供給途絶が許されない医療、製薬をはじめとするライフラインの強靭化、こうした観点からも原子力による大容量の安定した脱炭素のベースロード電源が必要であると、多くの会員からお聞きしています。
このため、原子力発電の新規建設を前提に、その基数と時期を次期エネルギー基本計画に明確に記載していただくことが、まずは必要であります。この計画を実現化する観点から、課題を2つ申し上げます。
1点目は資金調達・回収に関してでございます。海外の先行事例から参考とすべき要素は、資金調達面では、米国のような政府の債務保証ならびに融資が重要であると思っています。これらの措置が為されますと、金融機関から原子力事業者に対してお金を貸して頂けるのではないかという合理的な見通しがございます。投資回収面では、英国のRABモデルを参考に建設費と運転保守費などの回収を確実にすること。特に、事業者に帰責性のない費用増加や変動は、定期的に見直され、適切に回収されることが必要であると思っています。
現在の我が国の電力自由化市場においては、投資の回収不能リスクが存在してございます。
また、現行の長期脱炭素電源オークションについても、これまで本委員会で議論があった通り残存リスクがあります。
本日は新規建設を対象に意見を申し上げましたが、既設プラントの安全対策工事のような資金需要にも同様の事業環境整備が必要であると考えます。
2点目は、新規建設を進める上で重要な革新軽水炉の規制基準についてでございます。
これには、規制当局とプラントメーカー・事業者による多くの対話が必要であります。関係当事者による対話を早期に深め、必要な規制基準などの制度の整備に努めてほしいと思っております。また、政府には、本件の早期進展の必要性に留意して、事業環境整備のスケジュールに反映していただきたいと考えております。
これまでの実績では、原子力発電所の建設リードタイムは約20年必要ということであります。革新軽水炉の初号機では更に時間がかかることも懸念されるため、本件は、必要な時期にプラントを稼働させるために最も重要な課題であると考えます。
以上
<参考>第40回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会(METI/経済産業省)
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