日印原子力協力協定の締結に向けて~原子力平和利用を通して世界に貢献を~

2015年11月12日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 高橋 明男

12月中旬に安倍首相がインドを訪問し、モディ首相と会談する方向で調整中との報道があった。日印間の原子力協力協定についても協議される見通しだ。両首相は昨年9月に「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップのための東京宣言」に署名しており、原子力を含む幅広い分野での日印協力関係の強化は両国の発展のみならずアジア地域の更なる安定と発展に寄与するものと期待されている。
インドでは今後の経済成長に伴い、エネルギー需要が大幅に増大すると見込まれている。そのため、原子力発電を現在の21基578万kWから2032年には総発電設備容量の9%に相当する6300万kWまで拡大する計画があり、大型軽水炉の導入に向けてわが国の技術力への期待は高い。

原子力分野におけるインドとの協力は、わが国にとって以下の点から大きな意義があると考える。
1) 世界第3位のCO2排出国であるインドはエネルギーと環境という地球規模の問題に対して大きな影響を及ぼしうる国であるため、わが国がインドの原子力発電の拡大計画に協力することは世界が直面している資源獲得競争や深刻化する地球温暖化問題の緩和に貢献していくことにつながる。
2) わが国は長年に亘るプラントの建設・運転・保守を通じて高い技術と高品質の製品を提供できるサプライチェーンを持っており、また福島第一原子力発電所事故の教訓を活かして一層の安全性向上に努めている。こうしたわが国の製品や技術により、インドの原子力発電所の更なる安全性向上に貢献することができる。
3) 今後高い経済成長が期待されるインド市場への展開はわが国の産業の活性化と共に、原子力技術の維持・向上および人材の育成・確保につながる。

インドは核不拡散条約(NPT)に加盟しておらず、1974年に核実験を実施したことから国際的な原子力協力を得られなくなり、独自に原子力開発を進めてきた。しかし米国は2005年にインドを国際的な核不拡散体制に取り込む方向に動き出し、核実験モラトリアムの実施、民生用施設へのIAEA保障措置の適用、原子力供給国グループ(NSG)ガイドラインの遵守等を条件としてインドとの原子力協力を進めることとした。NSGが2008年に45カ国参加のもとでNPT未加盟のインドに対する原子力協力を容認してからは、米、仏、露、加、韓、豪、カザフスタンなどの国々がインドと原子力協力協定を結んでおり、わが国も交渉を進めているところである。インドとの原子力協力の意義に鑑みて、政府には平和利用を担保するための協定の早期締結を期待したい。

当協会はわが国の原子力技術をもって世界に貢献できるよう、引き続き二国間および多国間の協力を通して、安全性向上など共通課題の解決やわが国の産業界の国際展開に資する活動を進めて参りたい。

以上

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