持続可能な開発目標(SDGs)達成に貢献する原子力科学技術

2019年6月10日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 高橋 明男

 本年6月28~29日に日本が議長国となり開催されるG20大阪サミットでは、持続可能な開発目標(SDGs)を中心とした開発・地球規模課題への貢献について議論される予定である。SDGsとは、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会を2030年までに実現するための国際目標である(別添参照)。2015年、国連総会で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」として採択された。G20は、翌2016年に「2030アジェンダに関するG20行動計画」を定め、メンバー各国がSDGsの達成に取り組んでいる。わが国は、2016年に内閣に設置した「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」において具体的なガイドラインとしてSDGs実施指針を策定し、さらにアクションプランを公表して主要な取り組みを進めている。

 SDGsでは17の目標が設定されているが、このうち特に、飢餓、保健、水・衛生、エネルギー、イノベーション、気候変動、海洋資源、陸上資源、実施手段の9つの分野で原子力科学技術が大きな役割を果たしている。
 この9つの分野で、「平和と開発のための原子力」を掲げる国際原子力機関(IAEA)がいかに貢献し、加盟国に対して積極的な支援を行っているかについて、本年4月の第52回原産年次大会でIAEAのナジャト・モクタール事務次長から具体的な紹介があった。たとえば、原子力発電のほかに、放射線照射や放射性同位体を用いて、土壌の肥沃度改善と効率的な水管理、作物の品種改良、アフリカ豚コレラや鳥インフルエンザの早期発見、害虫の不妊化、食品の生産地のトレース、がん治療など医療への応用、放射性医薬品供給、工業・産業分野での利用、大気汚染対策、海洋・土壌等の環境影響調査などを行っている。

 これらSDGsの達成に向け原子力科学技術を引き続き活用していくためには、将来を担う世代の人材の確保・育成が必要であり、また国民の放射線についての正しい理解が欠かせない。
 当協会は、原子力人材育成ネットワーク(参加79機関)等を通じて人材確保・育成に努めるとともに、放射線に対する理解が深まるよう分かり易い情報の発信に努め、SDGs達成を後押ししてまいりたい。

以 上

<参考>
「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)」について

 持続可能な開発目標(SDGs)(*1) とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)(*2) の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(*3) に記載された2030年までの国際目標である。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っている。
 国連に加盟するすべての国は、全会一致で採択したアジェンダをもとに、2030年までに、貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会など、持続可能な開発のための諸目標を達成すべく力を尽くす。日本としても積極的に取り組んでいる(*4)

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(*1) 国際連合広報センター
(*2) 外務省「ミレニアム開発目標(MDGs)」
(*3) 外務省仮訳
(*4) 外務省「日本の取り組み」

 

 

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