再処理事業変更許可の決定にあたって

2020年7月29日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 高橋 明男

 本日開催された原子力規制委員会において、日本原燃(株)再処理事業所再処理事業変更許可が決定された。これにより、原子燃料サイクルの中心をなす再処理工場の実現が大きく前進する。2014年1月の申請から6年半を要したが、これまでの日本原燃および原子力規制委員会をはじめとする関係者のご尽力に敬意を表したい。

 再処理は一度発電で使用した燃料(使用済燃料)からウランとプルトニウムを分離・回収し再度燃料として使用する資源の再利用化技術であり、再処理工場は国産技術である高レベル廃液のガラス固化および脱硝技術のほか、せん断、溶解、分離、精製はフランス、高レベル廃液濃縮、酸回収は英国、よう素除去はドイツなど、各国の技術の粋を集めた世界に誇れる施設である。

 原子力発電は燃料となる天然ウランを海外に依存しているが、この燃料はエネルギー密度が高く備蓄も容易であり、再処理することにより燃料として再利用できることから準国産エネルギーと位置付けられている。エネルギー資源に乏しい我が国の一次エネルギー自給率は11.8%(2018年度)と先進国の中でも特に低いものとなっており、使用済燃料の再処理は我が国の長期的なエネルギー確保に貢献するものである。

 また、再処理は使用済燃料を直接処分する方法に比べ廃棄物の体積を4分の1に減少させるとともに、天然ウラン並みの有害度になるまでの期間を12分の1(10万年を約8千年)に短縮できるといった、高レベル放射性廃棄物の処分に関する大きなメリットも有している。

 再処理の過程で抽出されるプルトニウムを含む我が国の核物質は、核兵器の不拡散に関する国際条約(NPT)に基づく国際原子力機関(IAEA)の厳しい査察を受けており、IAEAが公表する保障措置声明ではすべての核物質が平和的活動にとどまっているとの評価を今年も得ている。我が国は利用目的のない余剰プルトニウムを持たないとしており、再処理に当たってはこれまで以上に透明性への配慮が必要である。このことを示すためにもウランとプルトニウムを混合したMOX燃料を使用するプルサーマル計画を具体的に示していくとともに、現在安全審査中のMOX燃料加工施設の完成も着実に進めていかなければならない。

 今後、設計及び工事の計画(設工認)の認可やそれに基づく安全対策工事、検査等が残されているが、再処理施設は設備が多いことから膨大な作業が予想される。規制当局とのコミュニケーションを通じて効率的に審査等が進められるとともに、地域の皆様のご理解をいただきながら安全を第一に着実に工事が進められることを期待したい。当協会も原子燃料サイクルの役割や意義について丁寧に説明してまいりたい。

以 上

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<参考>
日本原燃:再処理事業の概要
https://www.jnfl.co.jp/ja/business/about/cycle/summary/

経済産業省・資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ:
「六ヶ所再処理工場」とは何か、そのしくみと安全対策(前編・後編)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/rokkasho_1.html
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/rokkasho_2.html

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