第6次エネルギー基本計画の閣議決定にあたって

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 新井 史朗

本日、第6次の「エネルギー基本計画」が閣議決定された。エネルギー政策を進める上の大原則として、安全性を前提とした上で、エネルギーの安定供給を第一とし、経済効率性の向上による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環境への適合を図る、S+3Eの視点の重要性が確認されたことは大変意義深い。

原子力は「安全性の確保を大前提に、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」との認識が引き続き示されたことは重要である。また、「2050年カーボンニュートラルを実現するために、原子力については、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していく」として、エネルギーシステムの脱炭素化における原子力の貢献に対する期待が示された。
このため原子力の利用を安定的に進めていくとし、安全最優先での再稼働、原子燃料サイクル政策の推進、長期運転を進めていく上での諸課題の検討、安定的な事業環境の整備、安全性等に優れた炉の追求、人材・技術・産業基盤の強化等について記載され、官民で取り組むべき方向性が示された。

一方、将来におけるリプレース・新増設について明記が無く、依存度低減という記述も残された。カーボンニュートラル実現のため原子力を含めあらゆる選択肢を活用するという諸外国の政策に比較すると、まだその道筋が明確でない。
例えばCOP26の議長国である英国政府は、10月19日に「ネットゼロ戦略」を公表し、英国が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指すにあたり、原子力は重要な役割を担っているとして、新たな大型軽水炉の建設や小型モジュール炉(SMR)開発などへの支援を表明した。

原子力は、安定供給の観点から極めて強靭で、経済性に優れ、かつ環境に対し持続可能な最も信頼できる確立された技術である。また、高速炉、SMR、高温ガス炉などの革新的な技術開発に代表されるように、今後も一層成長が期待できるイノベーティブな技術でもある。
10月13日に国際エネルギー機関(IEA)が公表した「世界エネルギー見通し2021年版(WEO-2021)」は、ネットゼロ社会への移行には、原子力発電電力量が2030年に現在の15%増、2050年には倍増しなければならないとし、さらに熱供給や水素製造による輸送・化学・製鉄など電力以外の分野における原子力技術活用への強い期待を示している。

わが国においても、岸田文雄首相が策定を表明している「クリーンエネルギー戦略」など今後の政策において、安定的で安価なエネルギー供給を確保しつつ、2050年カーボンニュートラルを実現するために、安全確保を前提とし、既に確立された低炭素技術である原子力を最大限活用していくことが示されることを期待したい。

原子力産業界としては、「必要な規模を持続的に活用していく」ことの責任をしっかりと受け止めなければならない。安全確保を大前提に、既存の原子力発電所の再稼働、安定運転、運転期間の延長により最大限の活用に努め、いずれ必要となる新増設・リプレースの準備や、運輸・産業など発電以外の部門でのCO2排出削減に有効な原子力技術開発にも取り組んでいくことが重要である。
それらを可能にするために、わが国が有している原子力発電に係る設計から建設・運転・保守に至る高度な技術と豊富な経験を将来にわたり活用すべく、人材の育成、技術の継承、産業基盤の維持が欠かせない。

当協会は、安全性を確保した上で原子力発電がCO2を排出せず経済性のある電力を安定的に供給できることを、国民の皆さまにご理解いただけるよう引き続き取り組んでいく所存である。

                                                           以上

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