「第7次エネルギー基本計画(案)」に対するパブリックコメント(意見募集)に意見を提出しました
2024年12月27日に経済産業省資源エネルギー庁より、第7次エネルギー基本計画の策定に向け「第7次エネルギー基本計画(案)」に対するパブリックコメント(意見募集)が開始されました。
これに対して、当協会は以下の通り意見を提出しました。
「第7次エネルギー基本計画(案)」に対する意見
- 原子力の価値と必要性がエネルギー基本計画に明記され、「最大限活用することが必要不可欠」と記載されたこと、および「可能な限り原発依存度を低減」を記載しない方針を支持する。
- 事業者の既設炉の早期再稼働、および稼働したプラントの長期サイクル運転、運転中保全の拡大、出力向上等の既設炉の最大限活用のための方針を支持する。
- 新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置に取り組むとの記載を支持する。そのうえで、原子力発電の最大限活用ならびにそれに必要なサプライチェーン維持・強化、人材育成の観点から、次世代革新炉の開発・設置について下記を要望する。
・建て替えに限定することなく開発・設置が進められるべきである。
・必要な容量と時間軸が示されるべきである。 - 事業環境整備に関する方針を支持する。そのうえで、原子力発電所は長期の建設リードタイムが必要であることから事業環境整備が喫緊の課題であることを明記して頂きたい。
具体的には「(カ)持続的な活用への環境整備、サプライチェーン・人材の維持・強化」に示された施策の時間軸を明確にするため、40ページ30-33行目の記述を「安定的に事業運営できるような事業環境の整備が必要であり、十数年から20年程度という相当長期の建設リードタイムが必要であることを考慮しつつ、引き続き必要な対応についての検討を進める。」として頂きたい。 - 原子力損害賠償制度の見直しについて総合的に検討を進め、必要な措置を講ずる方針を支持する。ただし、総合的な検討を進めるにあたっては、第6次エネルギー基本計画に記載のあった原子力事業者及び国の役割分担も考慮する必要があることを明記すべきである。
また、2040年、そしてそれ以降に必要となる原子力発電を確保するため、十数年から20年程度という相当長期の建設リードタイムが必要であることも考慮しつつ対応を進めるべきである。
以上
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<参考:パブリックコメントへの提出意見及び理由>
「第7次エネルギー基本計画(案)」に対する意見
意見1
該当箇所
(P14.37行-P15.2行)
我が国では、徹底した省エネルギーに加え、化石燃料の調達国の多角化や特定のエネルギー源に過度に依存しない分散化の取組を進めることにより、エネルギー安定供給の確保に努めてきた。今後、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用することにより、エネルギー自給率を向上させる必要があり、「2040年度エネルギー需給見通し」が実現した場合、2040年度エネルギー自給率は3~4割程度が見込まれる。
(P16.27行-29行)
供給サイドにおいては、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用することが必要不可欠である。
(P16.30行-35行)
DXやGXの進展による電力需要増加が見込まれる中、それに見合った脱炭素電源を十分確保できるかが我が国の経済成長や産業競争力を左右する状況にある。脱炭素電源を拡大し、我が国の経済成長や産業競争力強化を実現できなければ、雇用の維持や賃上げも困難となるため、再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再生可能エネルギーと原子力をともに最大限活用していくことが極めて重要となる。
(P23.27行-29行)
再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用することが必要不可欠である。
(P34.1行-8行)
原子力は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで発電が維持できる準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と技術自給率を有する自律性が高い電源であり、他電源と遜色ないコスト水準で変動も少ない。また、天候に左右されず一定出力で安定的に発電可能な脱炭素電源である。DXやGXの進展等により増加が見込まれる電力需要、特に製造業のGX、定格稼働するデータセンターや半導体工場等の新たな需要のニーズに、原子力という電源の持つ特性は合致することも踏まえ、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していく。
意見
原子力の価値と必要性がエネルギー基本計画に明記され、「最大限活用することが必要不可欠」と記載されたこと、および「可能な限り原発依存度を低減」を記載しない上記の方針を支持する。
理由
- 原子力発電は、温室効果ガスの排出量を削減し、エネルギーの安定供給、経済成長および産業競争力の維持・強化になくてはならないものである。こういった事実を国民としっかり共有し、取組むことが必要である。
- 2023年12月の国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の成果文書には、原子力発電が温室効果ガス排出削減の重要な手段として明記され、世界31か国が、地球温暖化防止のため、2050年に向けて世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させる宣言に賛同している。
- 原子力基本法には、原子力発電を活用する目的として、脱炭素社会の実現や電気の安定供給の確保が記載されている。
- 原子力発電は、運転経費に占める輸入相当分が約15%と為替レートの変動や地政学的影響を受けにくく、また、必要な設備や機器の9割以上が国産であり、国内経済の押し上げと雇用創出の大きな効果がある
意見2
該当箇所
(P39.17行-26行)
再稼働の加速に向け、原子力事業者を始めとした産業界は、「再稼働加速タスクフォース」の下に連携し、泊、大間、東通、女川、柏崎刈羽、東海第二、志賀、浜岡、敦賀及び島根において、原子力規制委員会による設置変更許可等の審査への適切な対応、使用前事業者検査の的確な実施、現場技術力の維持・向上を進める。国も、事業者間の協力強化等を指導していく。また特に、東日本の電力供給構造の脆弱性、電気料金の東西の格差などの観点から、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働への理解が進むよう原子力関係閣僚会議で示された方針に従って政府を挙げて対応を進めるとともに、他の再稼働していない原子力発電所に関しても、原子力規制委員会の審査や原子力防災対策等の進展状況も踏まえつつ、再稼働に向けて理解活動に取り組んでいくこととする。
(P39.38行-41行)
設備利用率の向上に向けては、ATENAが中心となり、トラブル低減の取組強化、安全性確保を大前提とした効率的な定期事業者検査の実施、運転中保全の導入拡大、運転サイクルの長期化に向けた技術課題整理に係る規制当局との議論等を引き続き進める。
意見
事業者の既設炉の早期再稼働、および稼働したプラントの長期サイクル運転、運転中保全の拡大、出力向上等の既設炉の最大限活用のための上記方針を支持する。
理由
- 2022年度のわが国の温室効果ガス排出・吸収量は約10億8,500万トンである。原子力発電は、我が国の温室効果ガス排出削減を向上させる手段として最も即効性、経済性があり、技術的に確立された発電方式である。わが国は33基の既設原子炉を保有しているが、現在、稼働は14基にとどまっているため、早期に最大限活用を実現する必要がある。
- 米国の原子力発電所ではオンライン・メンテナンスやリスク情報を活用してパフォーマンス・ベースで保全の高度化に取組んでおり、2019年から2023年の設備利用率の平均は92.9%となっている。一方、我が国において設備利用率が高かった5年間(1996年から2000年)の設備利用率の平均は81.6%で、仮に現存する33基の設備利用率が81.6%から米国並みの92.9%まで向上した場合、120万kW級の原子力発電プラント3基分を新設するのと同等の発電量やCO2削減効果が見込まれる。
意見3
該当箇所
(P40.3行-15行)
2040年より前に既設炉のうち300万kW以上が運転期間60年に到達し、その後に既設炉の脱炭素電源としての供給力を大幅に喪失していくことを踏まえつつ、2040年、そしてそれ以降の経済成長、国民生活の向上のために必要となる脱炭素電源を確保するため、十数年から20年程度という相当長期のリードタイムが必要であることを考慮しつつ対応を進めることが必要である。
脱炭素電源としての原子力を活用していくため、原子力の安全性向上を目指し、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置に取り組む。そして、バランスの取れた電源構成の確保を目指し、廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での次世代革新炉への建て替えを対象として、地域の産業や雇用の維持・発展に寄与し、地域の理解が得られるものに限り、六ヶ所再処理工場の竣工等のバックエンド問題の進展も踏まえつつ具体化を進めていく。その他の開発などは、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していく。
意見
新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置に取り組むとの上記記載を支持する。そのうえで、原子力発電の最大限活用ならびにそれに必要なサプライチェーン維持・強化、人材育成の観点から、次世代革新炉の開発・設置について下記を要望する。
- 建て替えに限定することなく開発・設置が進められるべきである。
- 必要な容量と時間軸が示されるべきである。
理由
- 半導体工場やデータセンターの増加、鉄鋼業や製紙パルプ業の脱炭素化、供給途絶が許されない医療、製薬をはじめとするライフラインの強靭化のニーズに対応するには安定した脱炭素電源である原子力が必要である。
- 原子力発電所の運転期間は40年で、通常1回20年までの延長が可能と定められている。これによれば、原子力の設備容量は2040年までに358万kW、2050年までに1406万kWが減少すると報告されている。
- 原子力発電の最大限活用にはサプライチェーン維持・強化、人材育成が必要である。
意見4
該当箇所
(P24.20行-23行)
脱炭素電源への投資回収の予見性を高め、事業者の新たな投資を促進し、電力の脱炭素化と安定供給を実現するため、事業期間中の市場環境の変化等に伴う収入・費用の変動に対応できるような制度措置や市場環境を整備する。
(P24.40行-P25.2行)
民間金融機関等が取り切れないリスクについて、公的な信用補完の活用とともに、政府の信用力を活用した融資等、脱炭素投資に向けたファイナンス円滑化の方策等を検討する
(P40.28行-32行)
脱炭素電源として、原子力を持続的に活用していくためには、電力システム改革によって競争が進展した環境下においても、大規模かつ長期にわたる投資、事業期間の長さ、規制基準、バックエンド事業といった原子力事業の特徴も考慮し、安定的に事業運営できるような事業環境の整備が必要であり、引き続き必要な対応についての検討を進める。
(P41.3行-7行)
産業界、官公庁が連携した原子力サプライチェーンプラットフォームを通じ、一般産業品活用等の事業承継支援、部品・素材の供給途絶対策、人材育成・確保支援を拡充するとともに、「未来社会に向けた先進的原子力教育コンソーシアム」(ANEC)などの関係機関の協力枠組みを活用しつつ、スキル標準導入等の人材育成施策や産学官の交流を関係省庁が連携して進める。
(P36.34行-40行)
六ケ所再処理工場とMOX燃料工場の竣工後、安全性を確保した安定的な長期利用を行うため、メンテナンス技術の高度化、サプライチェーン・技術の維持など、中長期での取組が必要な項目について、官民で対応を進める。
使用済MOX燃料の再処理については、国際連携による実証研究を含め、2030年代後半を目途に技術を確立するべく研究開発を進めるとともに、その成果を六ヶ所再処理工場に適用する場合を想定し、許認可の取得や実運用の検討に必要なデータの充実化を進める。
(P37.6行-8行)
プルトニウムの利用や六ヶ所再処理工場への使用済燃料の搬入などに係る事業者間の連携・調整に国が関与し、その機能強化を図る枠組みを検討し、必要な対応を進める。
(P65.30行-33行)
現在の事業環境下では、将来的な電力収入の不確実性が大きいことが大規模・長期の脱炭素電源投資が抱えるリスクと相まって、電源投資を躊躇させる一因となっている。このため、事業期間中の市場環境の変化等に伴う収入・費用の変動に対応できる市場や事業環境、併せて資金調達環境の整備を進めていく。
(P66.30行-32行)
需要家や地域などが脱炭素電源へのアクセスを求める状況等も踏まえつつ、内外無差別などの卸取引に関するルールの在り方の検討も進める。
(P67.1行-7行)
再生可能エネルギーや原子力等の脱炭素電源の設置や系統整備の担い手としての役割・責任を果たしていく上では、「円滑で安定的なファイナンス」が必要である。(省略)、長期にわたり、大規模な脱炭素電源や系統への投資が継続的に行われる必要がある。そのために、前述のとおり、民間金融機関等が取り切れないリスクについて、公的な信用補完の活用とともに、政府の信用力を活用した融資等、脱炭素投資に向けたファイナンス円滑化の方策等を検討する。
意見
事業環境整備に関する上記の方針を支持する。そのうえで、原子力発電所は長期の建設リードタイムが必要であることから事業環境整備が喫緊の課題であることを明記して頂きたい。
具体的には「(カ)持続的な活用への環境整備、サプライチェーン・人材の維持・強化」に示された施策の時間軸を明確にするため、40ページ30-33行目の記述を「安定的に事業運営できるような事業環境の整備が必要であり、十数年から20年程度という相当長期の建設リードタイムが必要であることを考慮しつつ、引き続き必要な対応についての検討を進める。」として頂きたい。
理由
- 2040年より前に既設炉のうち300万kW以上が運転期間60年に到達し、その後に既設炉の脱炭素電源としての供給力を大幅に喪失していくことを踏まえつつ、2040年、そしてそれ以降に必要となる原子力発電を確保するため、十数年から20年程度という相当長期の建設リードタイムが必要であることを考慮しつつ対応を進めることが必要である。
- 原子力発電所の追加安全対策や新規建設の投資回収の予見性を回復し、投資家が投資でき、事業者が資金を調達できる事業環境整備を早急に進める必要がある。
- 原子力発電所の建設には多額で長期間にわたる資金調達が必要で、2015年から実施されている電力市場の全面自由化では、そうした資金の電気料金による回収は保証されない。このような事業環境では、民間事業者が原子力発電所の追加安全対策工事や新規建設にかかる十分な資金を調達できない恐れがある。
- 長期脱炭素電源オークション制度については、政府の委員会で改善の必要を指摘する複数の専門家の証言や、委員意見が出されている。
- 先行する海外事例では、自由化市場においても資金調達に関する政府の債務保証ならびに公的資金の投入が可能となった国が複数あります。英国ではRABモデルによる建設費と運転保守費などの回収を確実にする方法の導入が検討されている。RABモデル同様に、わが国においても、事業者に帰責性のない費用増加や変動は、定期的に見直され、適切に回収されることが必要である。資金調達にかかる不確実性を下げることは、資金調達コストの低下を通じて、電気料金の引き下げにもつながる。
意見5
該当箇所
(P40.33行-38行)
原子力損害賠償制度について、万が一、原子力事故が発生した場合における被害者保護に万全を期すため、本賠償開始前の被害者への賠償の早期実現のための措置等を講じた。
賠償制度の見直しについては、東京電力福島第一原子力発電所事故に係る賠償の実情や電力システム改革等を踏まえ、適切な賠償を迅速に実施することを前提に、国民負担最小化、原子力事業者の予見可能性確保、安全性向上の評価といった観点等も踏まえつつ、引き続き、総合的に検討を進め、必要な措置を講ずる。
意見
原子力損害賠償制度の見直しについて総合的に検討を進め、必要な措置を講ずる上記方針を支持する。ただし、総合的な検討を進めるにあたっては、第6次エネルギー基本計画に記載のあった原子力事業者及び国の役割分担も考慮する必要があることを明記すべきである。
また、2040年、そしてそれ以降に必要となる原子力発電を確保するため、十数年から20年程度という相当長期の建設リードタイムが必要であることも考慮しつつ対応を進めるべきである。
理由
- 現行の原子力損害賠償制度は、被害者救済の観点から無過失無限責任となっており、原子力事業者にとって事業を進める上での予見性が十分ではなく、投資判断・ファイナンスにおけるネックになると懸念される。
- 2025年1月16日に発行されたIEAの報告書( The Path to a New Era for Nuclear Energy, International Energy Agency)は、日本の原子力事業者が負う無過失・無限責任は「大きな財務リスク」とし、賠償上限のある他地域とは対照的と断じている。
- 民間で原子力事業に取り組んでいく我が国においては、適切な賠償を迅速に実施することを前提としつつ、原子力事業者の予見性が確保されることが必要である。
お問い合わせ先:企画部 TEL:03-6256-9316(直通)