「GX2040ビジョン(案)」に対するパブリックコメント(意見募集)に意見を提出しました
2024年12月27日に内閣官房、GX実行推進室、経済産業省、外務省、財務省、環境省より、GX(Green Transformation)の実現に向け「GX2040ビジョン(案)」に関して国民からの意見が募集されました。
これに対して、当協会は以下の通り意見を提出しました。
「GX2040ビジョン(案)」に対する意見
- 新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置に取り組むとの記載を支持する。そのうえで、原子力発電の最大限活用ならびにそれに必要なサプライチェーン維持・強化、人材育成の観点から、次世代革新炉の開発・設置について下記を要望する。
・建て替えに限定することなく開発・設置が進められるべきである。
・必要な容量と時間軸が示されるべきである。 - 事業環境整備に関する方針を支持する。なお、市場関係、資金調達環境の整備や、公的な信用補完の活用とともに、政府の信用力を活用した融資等、脱炭素投資に向けたファイナンスの円滑化の方策等の検討にあたっては、電源毎の建設リードタイムを考慮しつつ整備・検討を進めていただきたい。
以上
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<参考:パブリックコメントへの提出意見及び理由>
「GX2040ビジョン(案)」に対する意見
意見1
該当箇所
(1)DXによる電力需要増に対応するため、徹底した省エネ、再生可能エネルギー拡大、原子力発電所の再稼働や次世代革新炉の開発・設置、火力の脱炭素化に必要な投資拡大や系統整備
4)原子力の活用
(P25.707行-714行)
脱炭素電源としての原子力を活用していくため、原子力の安全性向上を目指し、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置に取り組む。そして、バランスの取れた電源構成の確保を目指し、廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での次世代革新炉への建て替えを対象として、地域の産業や雇用の維持・発展に寄与し、地域の理解が得られるものに限り、六ヶ所再処理工場の竣工等のバックエンド問題の進展も踏まえつつ具体化を進めていく。その他の開発などは、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していく。
意見
新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置に取り組むとの上記記載を支持する。そのうえで、原子力発電の最大限活用ならびにそれに必要なサプライチェーン維持・強化、人材育成の観点から、次世代革新炉の開発・設置について下記を要望する。
- 建て替えに限定することなく開発・設置が進められるべきである。
- 必要な容量と時間軸が示されるべきである。
理由
- 半導体工場やデータセンターの増加、鉄鋼業や製紙パルプ業の脱炭素化、供給途絶が許されない医療、製薬をはじめとするライフラインの強靭化のニーズに対応するには安定した脱炭素電源である原子力が必要である。
- 原子力発電所の運転期間は40年で、通常1回20年までの延長が可能と定められている。これによれば、原子力の設備容量は2040年までに358万kW、2050年までに1406万kWが減少すると報告されている。
- 我が国の原子力産業・人材基盤は、震災以降の新規建設案件喪失で、この基盤が脅かされつつある中、将来的な建設期間長期化・コスト増加や、機器・部素材・燃料加工・廃炉を含めた産業基盤・技術の途絶、規制対応の面を含めた原子力人材の不足等を回避する必要がある。
意見2
該当箇所
(1)DXによる電力需要増に対応するため、徹底した省エネ、再生可能エネルギー拡大、原子力発電所の再稼働や次世代革新炉の開発・設置、火力の脱炭素化に必要な投資拡大や系統整備
6)CN実現に向けた電力の事業環境整備・市場整備
(P26.742行-754行)
電源投資を取り巻く足下の環境を踏まえると、インフレや金利上昇などの要因により、今後も電力分野の建設コストは上昇していく可能性がある。特に、大型電源については投資額が巨額となり、総事業期間も長期間となるため、収入と費用の変動リスクが大きく、電力自由化をはじめとする現在の事業環境の下では、将来的な事業収入の不確実性が大きい。こうした中では、長期の事業期間を見込む投資規模の大きな投資や、技術開発の動向、制度変更、インフレ等により初期投資や費用の変動が大きくなることが想定される投資については、事業者が新たな投資を躊躇する懸念がある。そのため、これまでの電力システム改革の検証等も踏まえながら、これらのリスクや懸念に対応し、脱炭素電源への投資回収の予見性を高め、事業者の新たな投資を促進し、電力の脱炭素化と安定供給を実現するため、事業期間中の市場環境の変化等に伴う収入・費用の変動に対応できるような制度措置や市場環境、資金調達環境を整備する。
(P26.755行-763行)
特に、脱炭素電源投資や系統整備等のファイナンスについては、それを支える金融機関・機関投資家等にとっても、融資・投資残高の大規模化による、リスク管理の重要性や規模管理の点等から、融資・投資を実行することへのハードルが高まってきていることが指摘されている。このため、様々な電気事業の制度見直しと併せ、民間資金を最大限活用する形で、電力分野における必要な投資資金を安定的に確保していくためのファイナンス環境の整備に取り組む必要がある。具体的には、民間金融機関等が取り切れないリスクについて、公的な信用補完の活用とともに、政府の信用力を活用した融資等、脱炭素投資に向けたファイナンス円滑化の方策等を検討する。
意見
事業環境整備に関する上記の方針を支持する。
なお、市場関係、資金調達環境の整備や、公的な信用補完の活用とともに、政府の信用力を活用した融資等、脱炭素投資に向けたファイナンスの円滑化の方策等の検討にあたっては、電源毎の建設リードタイムを考慮しつつ整備・検討を進めていただきたい。
理由
- 2040年より前に既設炉のうち300万kW以上が運転期間60年に到達し、その後に既設炉の脱炭素電源としての供給力を大幅に喪失していくことを踏まえつつ、2040年、そしてそれ以降に必要となる原子力発電を確保するため、十数年から20年程度という相当長期の建設リードタイムが必要であることを考慮しつつ対応を進めることが必要である。
- 原子力発電所の追加安全対策や新規建設の投資回収の予見性を回復し、投資家が投資でき、事業者が資金を調達できる事業環境整備を早急に進める必要がある。
- 原子力発電所の建設には多額で長期間にわたる資金調達が必要で、2015年から実施されている電力市場の全面自由化では、そうした資金の電気料金による回収は保証されない。このような事業環境では、民間事業者が原子力発電所の追加安全対策工事や新規建設にかかる十分な資金を調達できない恐れがある。
- 長期脱炭素電源オークション制度については、政府の委員会で改善の必要を指摘する複数の専門家の証言や、委員意見が出されている。
- 先行する海外事例では、自由化市場においても資金調達に関する政府の債務保証ならびに公的資金の投入が可能となった国が複数あります。英国ではRABモデルによる建設費と運転保守費などの回収を確実にする方法の導入が検討されている。RABモデル同様に、わが国においても、事業者に帰責性のない費用増加や変動は、定期的に見直され、適切に回収されることが必要である。資金調達にかかる不確実性を下げることは、資金調達コストの低下を通じて、電気料金の引き下げにもつながる。
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