第39回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会における新井特任フェロー発言内容

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 増井 秀企

2024年6月25日開催の第39回原子力小委員会において、新井特任フェローより専門委員として以下の発言を行いました。

私からは、4点申し上げます。

1つ目は既設炉の最大限の活用です。

安全確保を大前提とした既設炉の最大限活用は、我が国の3Eを向上させる手段として最も即効性があり、低廉で、確実性が高いものです。事業者はもちろん、規制当局を含め政府は一丸となって、早期再稼働、長期サイクル運転の導入、運転中保全の導入拡大、出力向上等、既設炉の最大限活用の推進に取り組むことが重要と考えます。

2つ目は、新増設・リプレースを含めた必要容量・時間軸の明記です。

ベースロード電源として安定的で経済性のある原子力には、今後、増加見込みの電力需要を支える役割が期待されますが、それだけでなく、水素製造などを通じ、製鉄等の電化が難しいエネルギーの脱炭素化に対しても、強い期待が寄せられています。私共にはそうした産業界の声として、原子力のように安定した脱炭素電源確保の見通しが無いと、国内での投資の意思決定ができない、という声が届いています。

また、そうした原子力への期待に応えるために必要となる、国内の原子力サプライチェーンは、長らく続いた新規建設の空白期間の影響を受け、ギリギリで持ちこたえている状況です。我が国が国内サプライチェーンを使った脱炭素電源として原子力を長期的に活用する為には、今すぐにでも、サプライチェーン企業が、その設備や人材に適切な投資を実施していくことが必要です。そしてそのためには、そうした企業が、長期的な事業予見性を得ることが必要です。建設のリードタイムから逆算すると、新規建設の投資決定は、早期になされる必要がありますが、国内サプライチェーンを維持するという観点からも、同じ事が言えます。

従って、次期エネルギー基本計画には原子力発電の新増設・リプレースを含め、その必要な容量と時間軸の明記が必要と考えます。

3つ目は、原子力事業者が適切な時期に新規建設の投資判断を可能とするための、事業環境整備です。

電力自由化において、著しく低下した原子力事業の予見性を向上させ、事業者・投資家が投資意欲を持てるような事業環境を、早期に整備する事が必要と考えます。

  • 1点目として、長期脱炭素電源オークション制度について、資料1(109-110ページ)の通りの課題が有り、早急に検討する必要があると思います。
  • 2点目として、立地点の確保の為に、「同一敷地内」制約の解除を含めた検討が必要と思います。
  • 3点目として、革新軽水炉にかかる規制基準について、新規建設のタイムラインを意識しつつ、検討を進める必要があります。

4つ目は、原子力の価値を広く国民の皆様に知ってもらうべく、官民挙げて理解促進に取り組む事です。

資料1にまとめられているような原子力の価値と必要性を、国民の皆様としっかり共有できるよう、エネルギー基本計画に明記して頂きたいと思います。

原子力発電は、必要な設備の9割以上を国内メーカーが製造・建設しており、建設による国内経済の押し上げ効果が大きい産業です。当協会の試算では、新規建設中は年間約1万2千人の雇用を誘発し、経済効果は1兆円以上、また、運転経費のうち、輸入相当分は僅か約15%と、為替レートの変動や地政学的影響を受けにくい特徴が有ります。

こういった原子力発電の特性も、広く国民の皆様に知って頂きたいと思います。

以上

<参考>第39回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会(METI/経済産業省)

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