第25回 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会原子力科学技術委員会 核不拡散・核セキュリティ作業部会における上田委員発言内容
一般社団法人日本原子力産業協会
2023年12月18日開催の第25回核不拡散・核セキュリティ作業部会において、当協会上田課長より委員として以下の発言を行いました。
国際機関との連携では、国際社会の核セキュリティ強化におけるIAEAの中心的な役割が確認されています。本年10月にIAEA核セキュリティセンターがウィーン郊外サイバースドルフ研究所内に開設されました。すでにISCNでは、同センターとの協力・連携を模索されているかもしれませんが、日本のプレゼンスを示す上でも、IAEA核セキュリティセンターをはじめとしたIAEAとのさらなる連携強化が重要と考えます。
核セキュリティに係るモメンタムを維持・強化していくことが重要です。また、核セキュリティの高い水準での維持・強化が原子力の平和利用を阻害するものでなく、イネーブラーであることの国際的な理解促進が必要と考えます。その意味で、唯一の核物質防護に係る国際条約である改正核物質防護条約の普遍化・浸透化が肝要です。日本が中心となり、特にアジア地域における、同条約およびINFCIRC225をはじめとするIAEA核セキュリティシリーズの普遍化・浸透化に係る取組みの強化が重要です。
昨今、新規導入国を中心にSMRなどへの関心が高まっています。また、先般開催されたCOP28では、日本をはじめとする米英仏加など20以上の国が、世界の原子力発電設備容量を2050年までに3倍に増加させるという野心的な目標を掲げた閣僚宣言に署名しました。世界的に気候変動防止に対する原子力の貢献への期待が高まっています。一方で、原子力平和利用では3Sが重要であるということを忘れてはいけません。原発の新規導入を検討している国々を中心とした若者に対する核不拡散・核セキュリティに係るキャパシティビルディングが重要と考えます。
核セキュリティ・サミット以降、日本を含め世界的に高濃縮ウランを使用してきた施設では、低濃縮ウランへの転換が順次進められています。日本では、すでにJAEAの高速炉臨界実験装置(FCA)などからの高濃縮ウラン燃料やプルトニウム燃料の全量撤去が完了しています。今後、近大炉のHEUの低濃縮化が進められると承知しています。一方で、同施設は原子力・放射線教育において重要な役割を果たおりますので、人材育成への影響が最小限になるように配慮いただきだいと思います。
数年ごとにIAEA主催の「核セキュリティに関する国際会議」が開催され、閣僚宣言が出されています。核不拡散・核セキュリティを取り巻く状況が厳しくなる中、文科省やISCNにはこのような動きにも注目いただきつつ、外務省など他省庁との効果的な連携をお願いいたします。
今後、サイバーセキュリティや内部脅威、放射線物質セキュリティなど新たな領域への活動展開の拡大が見込まれます。社会実装の観点からも、国内の原子力産業界における核セキュリティに係る最新動向やISCNなどの取組みに対する理解促進、問題意識の共有が重要です。当協会は、約400の原子力に携わる会員企業・機関を有しており、それら会員に対する情報提供の場を有していますので、何らかの形で協力可能であることを、最後に申し上げておきます。
以上
<参考>
原子力科学技術委員会 核不拡散・核セキュリティ作業部会:文部科学省 (mext.go.jp)
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