[原子力産業新聞] 1999年11月11日 第2012号 <1面>

東海村臨界事故
安全委・調査委
「緊急提言・中間報告」まとめ

安全審査見直し求める

9月30日に起こった茨城県東海村の(株)ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所・転換試験棟での臨界事故について原因究明と再発防止策の検討を行っている原子力安全委員会・ウラン加工工場臨界事故調査委員会(委員長・吉川弘之日本学術会議会長)は五日、科学技術庁内で第五回会合を開き、「緊急提言・中間報告」を審議、了承し、小渕首相と中曽根科学技術庁長官に提出した。そこでは「前例のない大事故であり」「国の内外に大きな衝撃を与えた」とし、事故の再発防止にあたっては、予期しないような原因による臨界事故が起こリうること念頭において安全審査を見直すこと、原子力関係事業者の安全教育の徹底などを求めている。【4,5面に緊急提言・中間報告】

報告では臨界事故の直接的原因は国の許認可を得た設備・方法とは全く異なる作業手順で濃縮度18.8%のウランを2.4kg以下に制限して管理すべき沈殿槽に、16.6kg程度を注入した結果だとし、こうした「通常考えられないような」作業が行われたのは、臨界に関する十分な知識・認識がなく「臨界に係わる危機予知」もなされないままに作業が行われるなど企業のマネージメントに問題があったと指摘している。

一方、国の規制のあリ方については、1.事業許可に際しては質量管理・形状管理などによって誤操作をしても臨界にならないよう設計されていることから「臨界事故が発生する恐れはない」とされていた、2.加工事業者は定期的な検査は義務づけられておらず、国は立入検査は実施できるが、何らかの問題が発生した場合に行われていること、また行政指導による任意の保安規定遵守状況調査は92年度まではほぼ行われてきたが、それ以降は実施されていない、3.運転管理専門家の巡視は毎月1回程度、JCOでも行われ、転換試験棟でも3回行われたが、巡視の時は施設が運転されていなかったなどの問題点を摘出し、改善策の検討を求めている。

また事故によリ周辺環境へ放出された放射性物質(希ガス、ヨウ素)からの線量は、周辺環境の中でも最大線量となる施設近傍の地点の実効線量当量は0.1ミリシーベルト程度、農作物でも検出された放射性物質は飲食物摂取制限指標の約50分の1であり、安全性に問題はないことが確認されているとしている。

緊急提言では事故現場の安全確保、住民等の不安に対する心のケアを含めた健康への影響についての適切な対応を求めているほか、原子力関係事業者に対しては、「安全確保の第一義的な責務は事業者にあるとし、安全確保の強化について、1.安全教育の徹底、2.責任者が確実にチェックするシステムの整備、3.安全確保のために必要なコストを適正に負担し、所要の組織や資材を整備する、4.事業者全体として安全情報を共有し、相互に協力して安全管理の水準の向上に資するような体制を構築することなどを提言している。国の安全規制については、安全審査の見直しや検査機能の強化を求めている。

同委員会では、今年中の最終報告を目指して、事実の背後にある構造的な問題まで踏み込んで、再発防止策の基本的考え方をまとめていくことにしている。


Copyright (C) 1999 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM,INC. All rights Reserved.