社会学者・開沼博氏が福島第一の独自調査に向け会見、海外への情報発信も視野に
「はじめての福島学」(2016年エネルギーフォーラム優秀賞受賞)などの著書を持つ社会学者で、立命館大学衣笠総合研究機構准教授の開沼博氏(=写真中央右)が7月21日、日本外国特派員協会で記者会見を行い、このほど著した「福島第一原発廃炉図鑑」(太田出版)を紹介するとともに、「廃炉の見える化」を目的とした独自の調査プロジェクトを進め、その成果を海外にも発信していく考えを述べた。会見には、福島第一、第二原子力発電所勤務の経験を活かし、現地視察を通じた地域住民・学生対象の学習支援活動などを行っている(一社)AFW代表理事の吉川彰浩氏(=写真中央左)も同席した。
会見の冒頭、開沼氏は、マレーシアの写真家が撮影した福島被災地の荒廃した光景を示し、「果たして事実を伝えているのか?」と疑問を投げかけた上で、実際、大熊町では廃炉に関わる企業の社宅・事務所の整備も進みつつあり、発災から5年が経過し交通渋滞やゴミ処理など、人の生活があるが故の問題も生じることをあげ、「認識のアップデートが必要な時期に来ている」ことを、国内外の記者団に訴えた。
開沼氏は、「センセーショナルな部分だけが独り歩きしてしまう」とも懸念したが、6月に刊行された「福島第一原発廃炉図鑑」について、一般の人たちは「廃炉」というと水素爆発の映像をまずイメージすることをあげ、「事実を事実として共有する」、その上で「廃炉に携わる未来の人たちを支援する」ことを目指し、作成するに至ったと説明した。また、図鑑の如くわかりやすさに努め、マンガによる説明やクイズなども設けているほか、福島第一原子力発電所事故に関し「エンジニアリングに絞らず、周辺に住む人についても述べているものは初めて」だと、同氏は述べている。
図鑑の刊行に続き、今後、開沼氏が取り組んでいく「福島第一原発廃炉独立調査研究プロジェクト」では、ステークホルダーとは一線を引く「客観性」、廃炉の現場や地域を読み解くためのリテラシーを持つ「中立性」、そこに生きる人の喜びや痛みをくみ取る「当事者性」の3原則に基づき、現地視察などを実施し本格的な調査とともに情報発信を進めるとしている。
プロジェクトの費用工面について記者から質問があったのに対し、開沼氏は、インターネットを通じた「クラウドファンディング」で賛同者も現れているとし、目標額への到達に応じ図鑑の英訳なども行う考えを述べた。
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