世界エネルギー会議:温暖化防止対策におけるトリレンマの解消について報告書
様々なエネルギー問題の研究・分析を通して世界の政策決定者に助言や勧告を提供している世界エネルギー会議(WEC)は5月27日、地球温暖化に取り組む際にネックとなるエネルギー政策上のトリレンマ間でバランスを取るために、優先的アクションを必要とする5分野を示した報告書を公表した。WECに参加する国と地域であまねく開催したワークショップや、官民両方のエネルギー部門で行ったリーダー達のインタビューを通じて、次のような包括的メッセージに到達したと明言。すなわち、「エネルギー産業界には意欲的な温暖化防止策に合意する準備ができており、低炭素エネルギー・システムへの明確な道筋が設定できる、単一の温室効果ガス削減目標を示した国際的な枠組の構築を求めている」ということだ。
報告書はまず、温暖化防止に向けて乗り越えねばならない重要なトリレンマとして、(1)経済成長のためのエネルギー供給保証、(2)社会的安定のための公平なエネルギー配分、(3)環境上の持続可能性--を特定し、これらには同時に取り組む必要があるとした。地域や国毎の優先事項により求めるソリューションは異なるものの、国際枠組の欠如で生じた政策的な不確実性は受け入れ難いという点でエネルギー産業界の見解は一致していると指摘。世界の温暖化政策が不明確・不安定であることは、その取り組みの中で必要な投資48兆~58兆ドルを得る上で最大障壁の1つになっていると明言した。また、この件で政策決定者と産業界が積極的に誓約することは、対策の有効性を保証するために重要であり、国毎の必要性に応じた柔軟な手法と明確な排出目標を示した盤石な国際枠組が求められるとした。
その上で報告書は、国際枠組の効果的な実行を支援し、温暖化防止対策における目標達成を確かなものとするため、政策決定者が優先的にアクションを取るべき5つの分野を指定した。すなわち、
(1)「取引と技術移転」:政策決定者は環境物品・サービス(EGS)の開発と共有が容易になるようなメカニズムを構築し、低炭素技術の移転における関税などの障壁を取り除かねばならない、
(2)「炭素価格」:世界的な炭素価格の設定により、低炭素ソリューションから離れた投資を防ぐと共に競争性などに関する懸念を払拭し、経済やエネルギーの効率性を促進する、
(3)「資金調達」:クリーン・エネルギーへの投資を拡大し、個人投資を呼び込むため、持続可能なエネルギー・システムへの明確かつ安定した方向性を示した正しい政策シグナルを発する、
(4)「供給と同様に、需要にも集中」:再生可能エネルギーのような新技術の供給シェアが高くなるよう、需要と供給間のバランスに慎重に配慮する、
(5):「技術革新と研究開発・実証」:排出量の削減目標達成には新たな技術や燃料の開発が重要であることから、技術革新や研究開発・実証を継続的に支援する--である。