米エネ省:原子力技術の研究・インフラ強化プロジェクトに6,000万ドル投資
米エネルギー省(DOE)は6月5日、原子力関連の技術研究とインフラ開発を促進するため6,000万ドル以上の投資を行うと発表し、米国のエネルギーセキュリティのさらなる強化と温室効果ガスの排出削減の一助となるような、科学的ブレイクスルーを生み出す可能性のある68プロジェクトを全米から支援対象として選定したことを明らかにした。同省のE.モニッツ長官は、米国の低炭素電源による電力の6割以上を原子力発電所が生み出しているという事実に言及した上で、今後も米国のエネルギー構成要素における重要部分であり続けることは間違いないと明言。原子力関連研究に必要な資金を提供することで、国内原子力産業の健全性が長期にわたって維持されるよう支援していくとしている。
総額のうち3,100万ドルは23州の43大学が主導する原子力関係の研究開発プロジェクト用。DOE原子力局が2009年に大学向けの支援策を統合して立ち上げた「原子力エネルギー大学プログラム(NEUP)」を通じて、革新的な技術とソリューションの開発プロジェクトに提供される。また、350万ドルを研究炉や関連インフラ設備を有する9大学に提供。その安全性や性能の向上、および学生教育の改善等に使われる。さらに、1,300万ドルがNEUPの「統合研究プロジェクト(IRP)」向けとなっており、優先順位の高い原子力研究課題の解決や事故時耐性燃料オプションの開発、燃料過渡試験の評価などに当てられる。
DOEはこのほか、850万ドルを「原子力エネルギー実践技術(NEET)」を支援する研究開発プロジェクト10件に対して付与。ここでは劇的な性能改善が見込まれる革新的研究を中心に、DOE原子力局による新型原子炉や燃料サイクル概念の開発を直接的に支援・補完することが可能な分野横断的技術開発が対象となる。また、原子炉資機材や計測関係の研究を進めている国立研究所のインフラ増強案件2件に対して100万ドルを割り当てた。
なお、DOEは今回初めて、支援対象研究の選定プロセスを、最新の中性子・イオン照射試験装置や照射後試験施設、シンクロトロン・ビームライン施設などを無料で使用できるプロセスと全面的に統合した。政府保有の科学ユーザー施設を内外の研究者に広く活用させるNEETのサブ・プログラム「原子力科学ユーザー施設(NSUF)」を用いたもので、核燃料と放射性物質の調査を行う3件の大学プロジェクトと1件の国立研究所プロジェクトを選定。これらの実施にともなう施設使用料300万ドル以上を全額負担するとしている。