米国:輸出入銀行の認可が失効、米企業の原子力輸出にも影響
米国の政府系輸出信用機関として国内企業の輸出事業促進のために低金利融資を提供してきた輸出入銀行(US EXIM)の認可が6月30日付けで満了した。US EXIM創設後の81年間に連邦議会は超党派で16回の再承認手続を行ってきたが、今回、下院の共和党議員などの反対により手続が取られなかったことから、初めてその認可が失効。7月1日からUS EXIMは新たな取引案件への融資が一切不可能になったものの、今年9月30日までの2015会計年度分の予算は十分充当されているため、既存のローンや保証案件はすべてこれまでどおり有効だとUS EXIMは強調している。
US EXIMの廃止を求める見解の主流は、US EXIMによる国庫からの持ち出し金が納税者に返還されず、外国の政府事業や企業の支援に米国民の税金が使われているというもの。また、2013年にB.オバマ大統領は気候変動対策の一環として外国の石炭火力発電所建設に対するUS EXIM支援を停止したが、US EXIMの再認可によってこうした政策が骨抜きとなる可能性が残り、外国の経済や環境、エネルギー・ミックスにまで影響が及ぶとの論調もある。
一方、米原子力エネルギー協会(NEI)は失効に先立つ6月25日と29日にUS EXIMの廃止に対する産業界側の見解を表明し、様々な点から利益よりも損失の方が大きいと訴えている。それによると、民生用原子力事業においては、ロシアや韓国、日本、フランスなどの国が強固な貿易金融を含む様々な方式でサプライヤーを支援しているため、US EXIMタイプの融資が確保されなければ米国企業による外国顧客からの受注獲得は難しくなる。今や原子力資機材を輸出するすべての米国企業が世界市場の中で非常に不利な状況に陥っており、結果として売上と雇用が失われることになる。また、原子力輸出で今後10年間に最大7億4,000万ドルの販売チャンスが見込まれるにも拘わらず、US EXIMがなければこのような機会は消え失せるほか、US EXIMの融資によって職を得ていた何万ものアメリカ人が失職の危険にさらされると強調している。