南ア:原子力新設計画の資機材調達を今月から開始
南アフリカ共和国は2010~2030年までの「統合資源計画(IRP)」に基づき960万kW分の原子力発電施設拡大プログラムを進めているが、政府は今月にも具体的な資機材調達プロセスを開始する考えを表明した。エネルギー省のT.ジョマット=ピーターソン大臣が7月5日に議会で野党・民主連合(DA)の質問に答えた際に明らかになった。同相は5月の議会で、戦略的パートナーの選定を含めた同プロセスを今会計年度(今年4月から来年3月)の第2四半期から始めるとしたほか、年度末には結果を内閣に示すと明言。潜在的な候補ベンダーを有する国としては、J.ズマ大統領が2月の一般教書演説の中で米国、韓国、ロシア、フランス、中国の5か国を挙げるとともに、2023年にも新設計画初号機の運転を開始すると表明していた。
DAの「影の内閣」でエネルギー相を勤めるG.マッケイ議員によると、政府の原子力拡大プログラムは透明性に欠ける分、政治的影響を受けやすく、1兆ランド(約10兆円)もの必要経費をどのように調達するのか十分説明されていない。DAとしては実際の資機材調達プロセスを始める前に、国の原子力規制当局がすべての候補ベンダーを徹底的に評価する必要があると認識。規制当局は提案技術とその安全性、南アへの適用可能性、コストなどを精査した上でエネルギー省に勧告を行うべきだとした。同議員はまた、特定の候補ベンダーの日程に合わせるために資機材調達プロセスに十分な時間を割かず、候補ベンダーの徹底審査を犠牲にしていると思わざるを得ない根拠があると指摘。ロシアが提案したような、建設資金の提供と完成発電所の運転をセットにする資金調達取り決めは戦略的パートナーの選定基準になり得ないと批判している。
昨年9月に南アがロシアと原子力産業協力並びに戦略的パートナーシップに関する政府間協定を締結した直後、ズマ大統領の独断によりロシア企業の受注が決定したかのような報道が広がった。このためエネルギー省は翌10月、新設計画のベンダーは公平かつ競争原理に基づいたコスト効果の高い方法で進めると改めて表明。候補ベンダーを擁する様々な国と潜在的な協力枠組となる協定を結ぶ方針を強調していた。