ロシア:福島第一発電所汚染水からのトリチウム除去検証試験プロジェクトが進展
ロシアの国営原子力総合企業ロスアトム社傘下の設計会社であるアトムプロエクト社は7月8日、福島第一原子力発電所の汚染水からトリチウムを除去する技術の実証ユニットについて、概念設計と関連の作業文書すべての作成が完了し、顧客である放射性廃棄物管理企業「RosRAO社」に引き渡したと発表した。実証ユニットは一日あたりの処理能力が4.8立方メートルで、来年初頭にもRosRAO社がレニングラード支部に建設予定。アトムプロエクト社は2011年にRosRAO社と共同でトリチウム汚染水処理のための特別設備「TRITON」を開発した関係で、RosRAO社の依頼により実証ユニットの設計や建設、配管施工、換気・電気システムに関する詳細文書を準備していた。同ユニットでは模擬汚染水48立方メートルの浄化試験を行う計画となっている。
福島第一発電所の汚染水からは多核種除去設備(ALPS)で62核種を除去する取り組みが進められている。しかし、ALPSで分離できないトリチウムについては経済産業省が昨年夏、三菱総合研究所を事務局とする「廃炉・汚染水対策基金(上限10億円)」の下で、実現可能性がある技術の実証ユニットにより分離性能や建設コスト、運転コスト等を評価するという「トリチウム分離技術検証試験事業」の公募を実施。RosRAO社とフローピン・ラジウム研究所の企業連合のほかに、米国のキュリオン社、GE日立ニュークリア・エナジー・カナダ社を採択事業者に選定した。同事業では2016年3月までに、分離係数100以上というトリチウムの除去性能に加えて一日あたり400立方メートルまで汚染水の処理規模が拡大可能と実証することが条件となっている。
なお、アトムプロエクト社はフル・スケールの汚染水浄化ユニットについても設計開始する交渉を日本側と進めているとしたが、この検証試験プロジェクトは経産省がトリチウム分離技術に関する最新知見を得るために行っているもので、分離処理を実施するかはまだ決定していない。