ウクライナ:フメルニツキ3、4号機完成計画でロシアと結んだ協定取り消しへ
ウクライナのA.ヤツェニュク首相は7月8日、フメルニツキ原子力発電所3、4号機を完成させるために2010年にロシアと調印した協力協定の解除を議会に提案したと発表した。同協定における義務事項の履行をロシアが怠ったことが主な原因だと説明している。この前日、エネルギー石炭産業省は内閣に対して、エネルギー自給に向けた新政策である「2020年までの持続可能な開発戦略」の実施状況を報告。この中で、ロシアに依存してきた国内原子力発電所用原子燃料の調達先をウェスチングハウス(WH)社などに一層多様化することと共に、フメルニツキ完成計画に関するロシアとの協定解除案も盛り込んでおり、内閣はこれを審議した上で決定した。ロシアによるクリミア併合など、近年、紛争が続くロシアへのエネルギー依存を軽減するため、受注企業をロシアのアトムストロイエクスポルト(ASE)社からチェコのスコダ社など、他の欧州企業に変更することを狙ったものと見られている。
フメルニツキ3、4号機の建設は1980年代半ばに相次いで始まったが、チェルノブイリ事故発生を受けて1990年に作業が中断した。ウクライナは2008年に資金援助を条件とする国際入札を実施し、ASE社の落札を決定。100万kW級のロシア型PWR(VVER)として2016年までに2基とも完成させる計画になっていた。ウクライナはまた2010年9月、原子燃料の成形加工工場を中南部のキロボフラード州に建設する計画の契約先としてロシアのTVEL社を選定していた。
同国は一方、2008年から南ウクライナ原子力発電所に燃料を供給してきたWH社との契約供給量を大幅に増加するとともに、契約期間も2020年まで延長することを昨年12月に決定。エネルギー石炭産業省のV.デムチシン大臣は7日付けのインターファクス通信で、燃料供給の多様化でWH社との協力を強化することにより、ロシアとの燃料価格交渉で優位に立つ狙いがあると答えている。
現地の報道によると、フメルニツキ完成計画の協定解除決定に対してロシアの原子力総合企業ロスアトム社は、「今のところウクライナから正式な通達はないが、当社は協力を継続する心構えでいる」とコメント。原子燃料成形加工工場プロジェクトについても、TVEL社が一部の機器を製造したものの、ウクライナから支払がないので納入できないと述べたことが伝えられている。