IAEA:柏崎刈羽原子力発電所の運転安全評価を終了

2015年7月14日

OSARTのクロージング会合©東京電力

  OSARTのクロージング会合©東京電力

 国際原子力機関(IAEA)は7月13日、運転安全評価チーム(OSART)が東京電力の柏崎刈羽原子力発電所で6月29日から14日間、実施していた安全対策に関する調査を完了したと発表した。同発電所で特定した良好事例と対策の強化勧告などをまとめた暫定報告書を発電所管理者に手交。これを発電所側の事実関係コメントと合わせてIAEA本部で審査した上で、3か月以内に最終報告書を同発電所と経済産業省に送付するとしている。

 OSARTは、IAEA加盟国の原子力施設における運転管理の安全性を継続的に維持・向上させるための支援活動。加盟国の要請を受けてIAEAが調査団を派遣し、施設の運転管理の現状をIAEAの安全基準に照らして評価するほか、良好事例や改善提案、助言などを、当該加盟国に報告する。柏崎刈羽発電所では2004年と2006年にOSARTとそのフォローアップ調査を受け入れた実績があるが、今回は福島第一発電所事故後に実施した対策等を評価してもらい同発電所6、7号機の再稼働への理解につなげるため、経産省の宮沢大臣が今年1月、IAEAの天野事務局長と会談した際に同事故後初の受け入れを決めていた。

 IAEAの専門家2名に原子力安全に関する国際的な専門家8名を加えたOSARTチームは、柏崎刈羽発電所における指導・管理、訓練、運転、放射線防護、技術支援、運転経験、緊急時対策、および過酷事故管理--を重点的に審査した。良好事例としては過酷事故に対して包括的かつ堅固な防御策が取られたと指摘。すなわち、津波と洪水への防護をさらに固めたほか、バックアップ電源やポンプ、熱交換器がサイト設備と可動設備で強化された。また、すべての職員が緊急事態に万全に対処できるよう、難しい状況を想定した演習が頻繁に実施されるとともに、火災リスクを最小限に抑えるため、すべての可燃物の徹底管理策が施されたとしている。

 一方、安全運転上の改善が必要な部分としては、同発電所が教訓を原子力産業界全体で共有できるよう、運転経験の蓄積システムを統合し、それらを通じて収集した情報をもっと積極的に活用すべきだと提案した。また、使用済み燃料貯蔵プールで起こり得る事象も含め、事故管理ガイダンスを発電所全体に適用すべきだとしたほか、発電所の緊急時計画を全面的に統合し、明解で利用し易い形に文書化すべきだと指摘している。