国連安保理5か国とドイツ:核開発問題解決に向けた協議でイランと最終合意

2015年7月15日

©EC

          ©EC

 イランの核開発疑惑を巡って協議を続けてきた国連安保理5か国とドイツ、および欧州連合(EU)は7月14日、この問題を解決するための包括的共同行動計画(JCPOA)の内容について、イランと最終合意に達したと発表した。調整役を務めたEUのF.モゲリーニ上級代表とイランのJ.ザリフ外相がウィーンで共同声明を発表したもの(=写真)。JCPOAは本文のほかに5つの技術付属文書で構成され、イランのウラン濃縮活動を大幅に制限する一方、国際原子力機関(IAEA)がそれらの制限を確証し次第、これまで国連安保理やEU、米国が課してきた決議や制裁を解除することが盛り込まれた。共同声明の中で両者は「過去10年以上にわたった交渉を成功裏に終結し、論争を解決することができた」と明言。平和への誓約を共有し世界を一層安全にするための信頼を築く条件が設定され、お互いの関係に新たな一章を開く歴史的な日になったと強調している。

 今回のJCPOAは、6か国らとイランが2013年11月に合意した項目と、今年4月にローザンヌで公表したJCPOAの枠組を叩き台として最終決定した。米国務省によると、JCPOAはイランの核兵器開発を可能にする4つの経路を遮断。すなわち、(1)ナタンズ施設での高濃縮ウラン生産、(2)、フルドウ施設での高濃縮ウラン生産(3)アラク重水炉による兵器級プルトニウムの生産、(4)秘密裏の核開発プログラム--である。イランでは現在、ナタンズとフルドウにウラン濃縮施設があり、8~10個の核弾頭製造が可能なウラン在庫を保有している。しかし、イランは今後JCPOAに従い、ウラン在庫の98%までを削減し、15年間は濃縮活動をナタンズ施設に限定。同施設での濃縮レベルも3.67%までとしなくてはならず、現在両施設にある約20,000台の遠心分離機は今後10年間に6,104台まで削減する。フルドウ施設は濃縮活動を停止し、原子力・物理・技術センターに転換することになる。

 3つ目の核開発経路となるアラク重水炉は、兵器級プルトニウムが生産できないよう設計変更し、使用済み燃料は同炉が存在する限り、すべて国外に搬出。イランは今後少なくとも15年間は新たな重水炉建設が許されない。さらに、秘密裏の核開発プログラムに関しては、IAEAの国際査察官がイランのすべての申告済み施設でモニタリングを継続的に行うだけでなく、核分裂性物質が秘密裏に極秘施設に運ばれることがないよう確証する。査察官が不審な施設の存在に気付いた場合について、イランはIAEA保障措置協定・追加議定書の条項を実行することに合意。査察官は核開発が疑われる施設への立入と査察が可能になるとしている。