スイス:ベツナウ1号機のRVでヒビの兆候検出、再稼働は10月に延期
スイス連邦原子力安全検査局(ENSI)は7月16日、年次点検中のベツナウ原子力発電所(=写真)1号機(PWR、38万kW)で事業者のAXPO社が超音波探傷検査を実施した際、原子炉容器(RV)でヒビの兆候が検出されたため、詳細な調査が必要になったと発表した。ENSIは現在、この検出結果に関するAXPO社の評価を待っているところで、同炉の安全性に影響しないと確認されるまで再稼働は許可しない方針だ。
一方、AXPO社の同日付発表によると、1号機ではRV母材の一部分から製造過程における僅かな異常が検出されたため、現行規制への適合性を評価する追加の計測・分析を実施した上でENSIに提出したという。暫定的な計測結果からは安全運転を継続する上での懸念は導かれなかったものの、今後数週間のうちに数値の分析と詳細な計算に基づいて、これを確証しなくてはならないとした。また、同炉では予定していたRV上蓋の取り替えが遅れているため、再稼働は10月末に延期されるとの見方を示している。
2012年夏にベルギーで、ドール3号機とチアンジュ2号機の原子炉容器に毛状ヒビの兆候が検出された後、2013年1月にENSIは国内4サイトの原子力発電所に対して製造関係の文書を点検するように指示。その際、ベツナウ1号機のRVにヒビの存在は示唆されなかったとしている。また、ベルギー原子力規制局(FANC)は同じメーカー製のRVを持つ原子力発電所リストを公表したが、その中にスイスのミューレベルクとライプシュタット両発電所が入っていたことから、ENSIは両発電所のRVについて調査を実施。これらに対する懸念はすでに払拭されたとする一方で、残るベツナウとゲスゲン両発電所については2013年8月、「今後3年以内に次の定検に合わせて超音波探傷検査を実施する」と言明していた。
なお、AXPO社はベツナウ2号機(PWR、38万kW)についても、出来るだけ早急に同様の点検を行う方針で、保守点検スケジュールを繰り上げるため、数日中にも停止プロセスを改定する。予定していた緊急用の新しい電力供給システムの統合やRV上蓋の取り替えといった作業も実施するとしている。