フランス:エネルギー移行法案が可決成立、2025年までに原子力発電シェア50%へ
フランス国民議会(下院)は7月22日、昨年10月から約150時間を費やして審議していた「緑の成長に向けたエネルギー移行法案」を可決成立させた。昨年10月に第1読会の段階で承認した設定目標をほぼ温存する内容で、F.オランド大統領が2012年に選挙公約として掲げていた、「原子力発電シェアを現在の75%から2025年までに50%まで削減すること」のほか、原子力発電設備を現状レベルの6,320万kWに制限することが正式決定した。大統領公約の1つであった「フランス最古のフェッセンハイム原子力発電所を2016年までに閉鎖する」点については、閉鎖プラント名の具体的な特定を回避。同国初の欧州加圧水型炉(EPR)として建設中のフラマンビル3号機(FL3)が完成した際、設備容量を現状レベルに抑えるため、事業者であるフランス電力(EDF)が既存設備の中から閉鎖プラントを特定しなければならなくなった。フランスでは、再生可能エネルギーの開発、省エネルギーの推進、電源多様化などを柱とするエネルギーの移行政策を進めるため、2012年11月から全国討論を半年以上開催して国民の意見を広く聴取。それらの総括文書を叩き台として、昨年6月にエネルギー移行法案を作成した。原子力関連では、昨年10月に下院が同法案を審議後、野党が多数派を占める上院が今年3月の審議で原子力設備の上限を6,480万kWに、発電シェアの引き下げ期限も「しかるべき時期」に修正。FL3運開後もフェッセンハイム発電所の運転継続が可能となるよう図ったが、それぞれの案文で上下両院が和解に至らなかったため下院が再審議を行っていた。
原子力以外の決定項目としては、再生可能エネルギーのシェアを2030年までに32%まで引き上げるとした。温室効果ガスの排出量も、2030年までに1990年比で40%削減するほか、国の最終エネルギー消費量は2050年までに半減させる。化石燃料の消費量も2030年までに2012年比で30%削減することになった。またフランスは今年末、パリCOP21のホスト国として2020年以降の温室効果ガス排出枠組策定を牽引しなければならないことから、法案審議の最終段階で意欲的な炭素税の長期目標を設定。すなわち、現在1トンあたり14.50ユーロの炭素税を2020年に56ユーロ、2030年には100ユーロに増加させるとしている。
議会は同法案について5,000以上の修正項目を審議した結果、最終的に970項目を採用。多くの目標値を設定した一方で、それらをどのように達成するかについては当初案より不明確になったとの指摘もある。