フランス電力:アレバ社の原子力部門の51~75%を買収することで合意

2015年7月31日

 財政難に陥ったフランスの原子力産業複合企業アレバ社を救済するため、同社の原子炉事業買収条件について協議してきたフランス電力(EDF)は7月30日、アレバNP社の株式を少なくとも51%購入することでアレバ社と合意し、最終合意に達するための主要条件や項目を記した了解覚書に両者が調印したと発表した。EDFが主導する専門企業の創設により原子炉輸出でフランス原子力産業界としての提案を行うといった項目が盛り込まれており、原子炉メーカーと原子力発電事業者が一体となったことで、世界の原子炉新設市場におけるフランスの競争力は一段と高まると見られている。アレバ社はアレバNP社株の最大25%を保有する少数株主として留まる予定。EDFは正式な買収オファーを提出する前に残りのアレバNP社株を購入する可能性のある企業との交渉を進める方針である。一方、アレバ社側の発表では、75%すべてをEDFに売却することを念頭に協議を続けるとしている。

 EDFの発表によると、両者の戦略的連携に関する覚書は3つの部分で構成される。まず、(1)研究開発や海外への原子炉販売、使用済み燃料の貯蔵、施設の廃止措置といった分野で協力効率を改善するため、両者は包括的な戦略・産業上の合意を目指すとした。次に、(2)原子力機器と燃料の製造、および原子炉サービスを担当するアレバNP社の排他的支配権をEDFが握ることとし、EDFはアレバNP社株の少なくとも51%を取得。アレバ社は戦略的連携の一環として最大25%を保有するが、その他の少数株主が参加する可能性もある。両者の連携により、国内の既存原子炉の運転期間延長プログラムにおける最も重要な活動を一層確実なものとするほか、EDFの運転経験をフィードバックしてエンジニアリング・サービスやプロジェクト管理、一部の製造活動の効率を改善する。そして、(3)新たな原子炉プロジェクトにおける設計・管理の合理化を目的とした専門企業を設置し、EDFとアレバ社が8:2の比率で保有。ここでは、フランス原子力産業による輸出提案やプロジェクトの準備・管理の改善を目的としており、具体的にはアップストリーム段階のプロジェクトで提案を行うため戦略的なマーケティング調整を改善するほか、顧客のニーズを反映した一層競争力のある提案を開発する。また、日本や中国の主要企業との連携を強化しつつ原子炉製造の範囲を調整・拡大し、いくつかの国で試験的に行われている「発電事業者とサプライヤーの一体型モデル」を構築することになる。

 アレバNP社株の取引価格について、両者は27億ユーロ(約3,700億円)で合意しており、取引移行期間におけるキャッシュの処理は今後の協議で決定予定。フィンランドのオルキルオト3号機建設計画の遅れによりアレバ社は7億ユーロ(約950億円)の損失を被ったが、今回の覚書では、アレバNP社とEDFはこの関連リスクから完全に切り離されることになる。また、今年の第4四半期中にEDFが拘束力のある買収オファーを提出できるよう、8月からその他の問題に関する詳細調査の段階に移行。規制当局による承認等の条件が整い次第、2016年中に取引を実行したい考えだ。

 なお、アレバ社側の発表によると、B.フォンタナ氏がアレバNP社の新しい社長兼CEOに指名されており、9月1日に就任予定。同氏はスイスに本社を置く世界第一位のセメント・メーカーであるホルシム社や鉄鋼メーカーのアルセロール・ミッタル社、およびフランス国営の化学企業であるSNPEグループに長く在籍していた。