米原子力協会:オバマ政権のクリーン・パワー計画に「既存原子炉の価値を見落とし」とコメント
米国の環境保護庁(EPA)は8月3日、大気浄化法の下で既存の火力発電所による温室効果ガスの排出抑制を目指したクリーン・パワー計画の最終版を公表した。B.オバマ大統領の指示により2年がかりで作成していたもので、2030年までに発電部門からの排出量を8億7,000万トン減らし、2005年レベルから32%削減することを目指す内容だが、米原子力エネルギー協会(NEI)は同日、「新設原子炉に対する扱いの変更は歓迎するものの、最大の低炭素電源である既存原子力発電所の価値を見落としている」とのコメントを発表した。同計画では、はるか将来にわたって発電部門の運営方法を大幅に変える規則を新たに制定し、原子力を含むすべての電源が影響を受けることから、NEIのM.ファーテル理事長はこの問題における原子力発電所の貢献が正しく認識されることを求めるとともに、運転期間も60年に延長した上で新規原子力設備容量に含めるよう訴えている。
同理事長はまず、NEIとしてはEPAが低炭素発電に移行する計画の一部として原子力をどのように扱うつもりか今後さらに精査する考えであり、現段階の評価は暫定的なものだとした。その上で、同計画を各州が実行に移すためのガイドラインとなる最終規則は、提案されていた規則よりも多くのCO2排出削減を要求するとともに、規定遵守的な手法に重点を置いているようだと評価。EPAが建設中の原子力発電所をその目標設定上の計算に含めなかったことを歓迎する一方、炭素の削減における既存原子力発電所の貢献が、同計画中の「最良の排出削減システム」に盛り込まれていない点に失望感を表明した。
またNEIによると、EPAは最終規則のなかで「既存原子炉は現状のCO2排出量を低く抑える一助になる」と正しく認識。しかし、「現状の排出レベルをさらに低くすることはない」としていた部分については、仮に既存の原子力発電所が早期閉鎖された場合、CO2排出量が大幅に増加することを理解していないと非難した。さらにNEIの考えでは、運転認可が60年間まで更新された原子力発電所も新たな原子力設備容量に含めるべきであるのに対し、最終規則では運転認可の更新を正当に評価していないように見受けられるとしている。
NEIによれば、原子力は米国の低炭素発電量の63%を賄うなど、エネルギー政策や規制の面で低炭素エネルギー構成における重要要素と認識されるべきもの。2014年だけでも原子力は5億9,500万トンのCO2排出を抑制しており、温室効果ガスを削減する確実なプログラムの一部でなければならないと強調した。