川内1号機再稼働に対し、海外から大きな関心

2015年8月12日

 九州電力の川内原子力発電所1号機が8月11日、国の新しい規制基準を満たす原子炉第1号として再稼働し、日本が原子力発電ゼロの状態から約2年ぶりに脱したことに対する海外からの関心は高く、多くの外国メディアが取り上げた。それらの主な論調は、福島第一事故後、過半数の国民世論が依然として原子炉の再稼働に反対するなか、莫大な量の化石燃料輸入を抑え、日本経済を回復基調に導くため、原子炉の安全基準を大幅に厳しくした上で安倍政権が敢えて押し切ったというもので、ロイターやフランスのAFP、中国の国営新華社、米国のCNN、ロシアのTASSなどが報じている。英フィナンシャル・タイムスも、2011年以降に29%高騰した産業用電力価格が多数の小規模メーカーに大きな打撃を与えるなど、日本のエネルギー輸入依存が安倍政権による拡大戦略の大きな障害となっていた点に言及。再稼働における技術的、法的障害を九州電力が克服したことで、後続原子炉の再稼働はスムーズに進むとした見解を掲載する一方、緊急時対応、特に地震発生時については一層の訓練が必要で、シミュレーターや机上での経験だけでは不十分と警告するコメントも紹介した。

 このほか、国内で1,600万kWの大規模な原子力新設計画を進める英国政府は、駐日大使館を通じて再稼働を歓迎する声明を発表した。人類が直面する最も深刻な地球規模の課題である気候変動への対処、および安全で安定したエネルギーの供給を両立させるには、原子力を含むエネルギー技術の促進が不可欠と指摘。その上で、先のG7エルマウ・サミットで合意された今世紀中に世界経済の脱炭素化という目標を達成するためにも原子力の活用が不可欠との立場を取っていることと、一部の新設計画において日立と東芝が協力している点に触れ、日本政府が取り組む再生可能エネルギーの促進やベースロード電源としての原子力利用を支援するとの見解を表明している。

 また、原子力産業を支援する世界規模の産業界団体である世界原子力協会(WNA)は、次のようなコメントを発表した。

世界原子力協会(WNA)A.リーシング事務局長
rising 日本は本日(8月11日)、川内1号機の再稼働を通じて、より良い将来を創造するために全力を傾ける考えであることを世界に再認識させた。これは、日本を貿易収支回復の方向に確実に向かわせるのみならず、エネルギー自給の方策を取り戻し、温室効果ガスの排出量抑制にもつながる極めて重要なステップだ。

 福島第一発電所事故は住民の健康に有意な放射線影響を及ぼしたわけではないが、住民に長期の避難生活を強いているほか、国民の放射線に対する恐怖を増幅。日本の残りすべての原子力施設に新たな安全要件を課すことになった。

 しかし、国民の信頼を取り戻すためのプロセスが今日、大きく前進した。3.11によって国民の原子力技術に対する信頼が大きく揺らいだことは十分理解できるが、今や日本国民は、人々の健康や環境の防護に最大限の努力を払うと決意した事業者によって、日本の原子炉が効率的かつ確実に運転されつつあることを理解する必要がある。また、原子力発電が国内産業を支えるとともに、電気料金を低く抑えるため伝統的に果たしてきた主要な役割を改めて認識することは重要だ。

 世界の原子力産業界は、日本で最初の1基が再稼働を果たしたニュースを一致して歓迎。日本の原子力産業界は世界の原子力産業界の重要な一部であり、その困難をある程度分かち合う必要がある。

 川内1号機の復帰は日本を回復の道へと導くことになるが、この先、原子力産業界が国民とのより良い関係の構築に懸命に励み、その実績と将来的な技術を改善していくことは必要不可欠のことと言えるだろう。