米規制委:福島第一型BWRへのベント・フィルター設置要求で規則制定しない決定
米原子力エネルギー協会(NEI)の8月27日付けの発表によると、米原子力規制委員会(NRC)の委員4名が福島第一原子力発電所と同型格納容器のBWR事業者に対するベント・システムの改善指令(EA-13-109)について票決を行い、この要件を規則として成文化しない方針を3対1で決定した。電力研究所(EPRI)等の研究結果に基づき、NEIは格納容器外部のベント・フィルターを設置は費用対効果の側面から効果が薄いと指摘。これを義務付ける規則の制定を行わないのは、安全性改善の最も重要な部分に焦点を当てた正しい判断であり、産業界にとっても11億~16億ドルのコスト節約が可能になると歓迎している。
福島第一事故後の2012年3月、NRCは3種類の規制要件を国内原子力発電所に発令しており、そのうちの1件がマークⅠ、Ⅱ型格納容器を有するBWR(31基)の事業者が対象。翌2013年6月にNRCはこれを改定し、該当する事業者に対し(1)事故で発生した蒸気を凝縮する圧力抑制プールの性能改善を2014年6月から開始、(2)ドライウェルのベント・シナリオを分析し、必要な場合は2017年6月からベント・システムの設置オプションを開始--という2段階の指令を出し、炉心損傷に伴う状況下でのベント能力改善、あるいはそのためのシステム設置を指示していた。
NEIによると、NRC委員達は同指令への対応として原子力産業界がすでに実施中の安全性改善策によって、NRCの求める結果、すなわち過酷事故にともなう過加圧と高温の溶融燃料による鋼製格納容器のライナー損傷に対して格納容器の健全性確保が効果的に達成されている点に同意。産業界と規制当局双方の広範囲な技術分析に基づき、「これらの改善策により外部フィルターは不要になる」としていたNRCスタッフの勧告にも合致すると指摘した。原子力産業界のこのような安全性改善策は産業界ガイダンス「NEI 13-02」に盛り込まれており、NRCスタッフも承認済み。ベント用フィルタリング・システムを外部に設置する必要がなくなるよう、格納容器内を十分冷却・減圧するための原子炉圧力容器内への注水と管理された状態でのベント実施を組み合わせる必要性を訴えている。
NEIはまた、EPRIやNRCが3年以上かけて独自に実施した研究の結果、該当するBWRの格納容器を健全に維持するとともに、燃料損傷に伴う放射性物質放出のリスクを削減する最良の方策は、動的な燃料冷却と格納容器における状況に応じたベント実施であることが大々的に明示されたと強調。注水には損傷した燃料を冷却し、格納容器の損傷を防ぐ効果もあるとした。仮に外部フィルターが設置されたとしても、注水しないのであれば格納容器が損傷を受ける可能性があり、フィルターは役に立たない。こうした点からNEIは、注水することは格納容器内の圧力を下げるだけでなく、放射性物質を除去する一助になるなど、過酷事故の影響を二重に低減する効果があるとの認識を示した。
このほかNEIは、「産業界ガイダンスがNRC指令に準拠しているとNRCスタッフが認めた要件で規則策定まで行うのは余分なことであり、NRCと産業界にとって資源の浪費」という考えにNRC委員の過半数が同意したと明言。S.バーンズ委員長が票決の際、「累加の規制負担を軽減し、安全・セキュリティ上、最も重要な活動に集中するというNRCの方針に沿った判断だ」とコメントしたことを明らかにした。