国際エネルギー機関とOECD・原子力機関が電源別発電コスト予測報告書を改訂
国際エネルギー機関(IEA)と経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)は8月31日、「発電コスト予測(Projected Costs of Generating Electricity)2015年版」を公表し、一部の再生可能エネルギーによる発電コストが5年前の前回結果から大幅に下がる一方、原子力発電もその他のベースロード電源と比較して競争力があるとの分析結果を示した。
同報告書は両機関が数年おきに発表している共同研究結果で、2015年版は8版目に当たる。割引キャッシュフロー(DCF)メソッドという所定の割引率を使って、建設に要する数年間の実費用を運転開始時の現在価格に換算し、「耐用期間中の均等化発電コスト(LCOE)」を算出するという方式を採用。中国やブラジル、南アフリカを含む22か国の様々なタイプの発電設備181基(うち11基は原子力発電プラント)のデータに基づき、現在建設中で2020年までに起動する発電設備について、国毎、電源毎に発電コストを試算・分析した。それによると、前回の2010年版と比較して風力と太陽光の発電コストが継続的な技術開発の進展により大幅に下落。原子力発電については、新しい発電所の耐用期間全体の比較で資金調達費が相対的に低ければ、石炭や天然ガスといった既存のベースロード発電所より安価になるとの結果が出ており、これら2つの側面は過去5年にわたって発電におけるコスト・インフレを抑える一助になったと指摘した。
具体的な試算結果について報告書はまず、天然ガス複合火力発電(CCGT)と石炭火力、および原子力という3種類のベースロード電源について、LCOEを3%の割引率で比較した場合、すべての国において原子力が最も安価なオプションになるとした。しかし、原子力が石炭やガスより資本集約的技術であるという事実を反映し、割引率を上げた場合、原子力のコストは相対的に速やかに上昇。割引率7%で原子力発電コストの中央値は石炭の中央値に近くなり、10%では石炭とガスよりも高くなるという結果だった。数値的には、OECD加盟諸国における原子力設備の金利抜き建設コスト(オーバーナイトコスト)の幅が大きく、1kWeあたり2,021米ドル(韓国)から6,215ドル(ハンガリー)までと様々。LCOEに関しては、割引率3%で1MWhあたり29米ドル(韓国)~64ドル(英国)、7%で40ドル(韓国)~101ドル(英国)、10%では51ドル(韓国)~136ドル(英国)だったという。
同報告書は前回版でベースロード電源の大幅なコスト上昇を指摘していたが、今回はそうしたコスト・インフレが抑えられつつあることを示唆。あらゆる条件下で常にコストが最小という発電技術は存在せず、市場構造や政策環境、資金援助など、多くのファクターによって最終的なコストが決まると強調した。前回版とおおよそ同水準のコストがかかるとした原子力技術については特に、コストが世界的に上昇し続けるという認識が徐々に崩れつつあることは注目に値すると結論づけている。