世界原子力協会の「シンポジウム2015」がロンドンで開幕

2015年9月11日

ロンドンで9月10日、世界原子力協会(WNA)の年次総会にあたる「WNAシンポジウム2015」が、40カ国以上から650名の参加を得て開幕した。

WNAのジャン=ジャック・ゴトー会長は、冒頭挨拶で丁度営業運転を再開したばかりの川内1号機に言及し、「日本にとって大変意義深く、WNAとしても歓迎したい」と述べた。
続いて登壇したWNAのアニエッタ・リーシング事務局長は、世界のエネルギー事情を紹介するとともに、将来のクリーンな電力のために原子力が果たす役割を強調。水力発電の拡大が望めない現状では原子力が低炭素電源の中心となると指摘した。そのためには、(1)確固とした政策的バックグラウンド、(2)社会からの信頼、(3)エネルギー自立の精神--が重要との見解を示した。
同事務局長はまた、国際エネルギー機関(OECD/IEA)が世界の気温上昇を2度C以下に抑えるシナリオでは2050年までに毎年2,200万kW分の原子力発電設備を加えていく必要があるとしていた数字を引用。WNAとしては、2050年までに新たに世界全体で10億kWの原子力設備を新設し、総発電電力量に占める原子力の割合を25%にするとの目標を掲げた。現在、原子力の割合は約11%で、世界人口の3分の2が原子力利用国に居住している計算だが、2014年に送電を開始した原子力設備はわずか500万kWだった。同事務局長によると、原子力産業界は2020年までに新たな原子力設備を5,000万kW加え、2025年までの5年間でさらに1億2,500万kWを追加、その後2050年までの25年間で8億2,500万kWを増設すれば目標の10億kW新設を達成し得るが、目標とするところは、他の電源と公平な条件が原子力に与えられること、調和の取れた規制プロセス、そして効果的な安全基盤。原子力産業界は、規制緩和された電力市場や原子力税、巨額の資本投資、他の代替電源への補助金、といった課題を乗り越えなくてはならないだけでなく、原子力が低炭素の発電技術であるという認識も獲得していく必要があると言明した。
WNA2RR

 このほか初日には日本から、当協会の高橋明男理事長のビデオメッセージが紹介された(=写真)。高橋理事長は川内1号機の再稼働が3Eの観点から日本にとって大きな意義があると指摘。また日本政府が掲げる2030年までの原子力シェア目標20~22%を紹介し、会場から大きな拍手で迎えられた。
またマルコム・グリムストン氏(インペリアルカレッジロンドン客員教授)は豊かなボキャブラリを駆使して、エネルギー政策の意思決定について解説。オーストラリアの反原子力からの転向者であるベン・ハード氏は、原子力発電を除外した再生可能エネルギーのみですべての電力が賄えるというのは幻想であり、ハイリスクな試みだということを具体的な根拠を示した上で論証した。
会場では展示会も開催され、数多くのブースでにぎわっていた。
同シンポジウムは9月11日まで開催される。

                                                                  【石井敬之記者