ロシア:多目的高速研究炉MBIR建設で最初のコンクリート打設実施
ロシアの国家原子力総合企業ロスアトム社は9月11日、ウリヤノフスク州ディミトロフグラードの国立原子炉科学研究所(RIAR)で、多目的高速中性子研究炉(MBIR)を正式に着工したと発表した(=写真)。原子炉建屋部分で最初のコンクリート打設を実施したもので、2020年までに完成すればロシアの原子力部門における実験能力が大幅に増強されるだけでなく、ロスアトム社が世界の原子力発電研究の中心地とすべく設置する「国際研究センター」の技術的基盤が形成されることになるとしている。MBIRは鉛や鉛ビスマス、およびナトリウムなど複数の重金属による冷却が可能で熱出力は15万kW。その設計と建設は、2009年に連邦政府令として採択された目標プログラム「2010年から2015年、さらに2020年までの見通しを含む新世代原子力技術」に盛り込まれている。原子力発電を長期的に開発利用していくための広範な研究課題の解決やクローズド核燃料サイクルの確立、放射性同位体や改質物質の生産技術試験、および新型核燃料の研究といった、文字通り多目的の利用が可能で、1969年からRIAR内で稼働する高速実験炉「BOR-60(出力1.2万kW)」の後継炉という位置付け。ロスアトム社はBOR-60の後、同じナトリウム冷却高速炉で出力60万kWのBN-600、出力80万kWのBN-800をベロヤルスク原子力発電所3、4号機として運転・建設しているが、鉛や鉛ビスマスで冷却する高速中性子炉の試験・実証モデル建設も、そうした経験を基に進めている。その一環として、RIARは2017年の完成を目標とする鉛ビスマス冷却高速実験炉「SVBR-100(出力10万kW)」の建設も隣接区域で計画中である。
MBIRについてはRIARは昨年7月にサイト許可を取得したのに続き、同年11月に公開入札でウラルエネルゴストロイ社を総合建設請負業者に選定。今年5月に連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)がRIARに対して10年間有効なMBIRの建設許可を発給したが、ウラルエネルゴストロイ社ではすでに、サイトでの準備作業を進めていた。