独E.ON社:原子力発電部門の分離計画を撤回、子会社の下で操業へ
ドイツで3基の原子力発電所を操業するE.ON社は9月9日夜、これらの運転と廃止措置に対する責任を全うするため、原子力発電事業を来年1月に同社から分離・独立予定のUNIPER社には移管せず、ハノーバーを本拠地とする子会社のプロイセン電力に留め置くことになったと発表した。ドイツではその前の週、企業が組織改革を通じて閉鎖原子炉への責任回避するのを防止する損害賠償法案を政府が提示しており、E.ON社はこの政治的圧力に屈したという見方が大勢。しかし、同社のJ.テイセンCEOは「今回の決定は当社の企業戦略遂行上のリスクを避けるためのもので、UNIPER社のスピンオフを遅らせるような政策決定を待つことはできない」と述べ、同社が昨年発表した従来型発電部門の分離戦略は日程通り順調に進展中だと強調している。
E.ON社は国内の原子炉のほかに、国外の原子力発電所で少数株式を保有しているが、昨年11月の分社化戦略では原子力を含め石炭・石油、天然ガスなどの発電部門を新会社に分離し、自らは再生可能エネルギーや配電網の性能向上事業に特化していくとの方針を表明。これに対して、ドイツ国内では廃止措置で発生する追加経費の負担を逃れるためではないかとの疑念が噴出していた。
今回の声明の中でE.ON社は、国内で保有する原子力発電資産が発電部門の8%に過ぎないと断言。分社化戦略を進める上での重要ファクターではないため、同社が原子力部門の責任を何らかの形で縮減しようとしているという懸念は事実無根だと釈明した。原子力部門は今後、E.ON社の前身であるプロイセン電力の企業ブランドを再開して移管。E.ON社としてプロイセン電力の生産品を顧客に販売することはないが、同社はその基本戦略とは無関係に国内の原子力事業を保持すると決定。同社が新エネルギーに集中していく一方で、グループ内のプロイセン電力は国内原子炉の運転管理、および閉鎖や放射性廃棄物管理にともなう義務を全面的に担っていくことになり、約2,300人の従業員はUNIPER社への配属が取りやめになったと明言した
新体制への移行は2016年1月1日からで、デュッセルドルフにあった本拠地をエッセンに移すE.ON社は国外の従業員も合わせて約43,000人体制となり、計画どおり再生可能エネルギーや配電網事業等に専心。デュッセルドルフを本拠地とするUNIPER社は約14,000人の従業員数でスタートし、欧州内外の発電事業、および世界規模のエネルギー取引を実施していくと説明している。
E.ON社はこのほか、欧州における石炭・石油価格の急落と電力卸売価格の大幅な下落に加えて、同社に不利な政治・規制環境が収益に影響し、第3四半期に数10億ユーロ規模の減損が生じる可能性を表明。それでも2015会計年度の配当金は1株当たり50セントを維持していると強調した。