ロシアとIAEAが放射線安全分野での協力強化で実施取り決めに調印

2015年9月16日

調印にはIAEAの天野事務局長とロスアトム社のキリエンコ総裁が立ち会った©ロスアトム社

調印にはIAEAの天野事務局長とロスアトム社のキリエンコ総裁が立ち会った©ロスアトム社

 ロシアの国家原子力総合企業ロスアトム社は9月14日、放射線安全分野における国際原子力機関(IAEA)との協力を促進するため、両者が具体的なプロジェクトの実施取り決め(PAs)文書に調印したと発表した。ロシアの原子力関連施設における従業員の個人放射線リスクの評価方法を、個人被ばく線量計算と分析に基づいて開発するのが目的で、計画された被ばく状況下での放射線リスクの評価・管理に取り組むためのロシア版ガイダンスを策定。IAEAが審査した上で、ロシア以外の国の原子力関連施設にも同国の経験と手法の適用を勧告するとしており、IAEAは国際的な良慣行を加盟国に普及させる技術文書として同ガイダンスを発行する計画だ。

 PAsへの調印は、IAEAがウィーンで開催中だった科学フォーラムに合わせ、ロスアトム社のV.ペルシュコフ副総裁とIAEAのD.フローリー原子力安全担当事務局次長が行った(=写真)。同PAsは法的拘束力を持たない取り決め合意で、両者間で行われた放射線安全関連の全プロジェクトに協力を拡大。IAEAは同分野で現在協力関係にあるロシア機関すべてとのPAs調印を提案しており、ロスアトム社はその中でも率先して調印を行った最初のロシア機関となった。カバーされる範囲は、職業環境上の計画被ばく条件下における個人放射線リスクの評価と管理活動で、ロスアトム社の総合検査監督官とロシア保健省の専門家が参加する体制で3年間実施。経費をロスアトム社が調達する一方、IAEAは国際的な専門知見を提供することになる。

 同PAsの調印についてペルシュコフ副総裁は、「個人の職業被ばく線量を監督・管理するためのリスク評価実施でロシアは最初の国になる」と指摘。ロスアトム社としては、国家的な原子力発電所建設プログラムで同社が協力中の国に対し、自らの経験を共有する準備があると強調した。