スイス:議会上院が既存原子炉の運転期間に政治的制限を設けないと決定
スイス原子力フォーラムは9月24日、同国の長期的なエネルギー基本方針である「2050年までのエネルギー戦略」の法制化審議の中で、議会上院が既存原子力発電所の運転期間について政治的理由による制限を設けないと決定したことに歓迎の意を表明した。今後、下院が同法案について審議し、上下両院が同一の結論に達するまで両院で擦り合わせを行っていくが、上院案のまま最終決定した場合、既存炉は純粋に安全性の観点から技術的な期限まで運転が可能になると見られている。
2011年3月の福島第一原子力発電所事故を受けて、スイス連邦政府は同年5月に「2050年までのエネルギー戦略」を発表し、今後原子炉の建て替えは行わず、2034年までの間に既存炉5基を段階的に廃止していくと決定。これらの運転期間は約50年間となっていた。しかし、これを45年間に限定し、2029年までに脱原子力達成するというイニシアチブを緑の党が提案したのに対して、連邦政府は同戦略を具体化するための「第一次立法提案パッケージ」の中で、安全性が確保されている限りは明確な運転期限を設けないとしていた。
原子炉の新設禁止という政策項目については、両院はこれを維持することですでに合意済み。スイス原子力フォーラムは「特定の技術を禁止し新設計画に許可を発給しないという考え方は、法的観点および国の政策という観点からも正当化できない」とし、同国のエネルギー政策における目標に反していると訴えた。総発電量の4割を賄っている既存炉の設備容量を再生可能エネルギーで代替可能であるかは、今なお非常に疑わしいとの見解を表明しており、大幅な政策転換は国民投票で法制化されるべきだとした。また、運転期間の制限については、安全性の向上にはつながらないと明言。「新たなお役所仕事を生むだけ」との認識を示している。