米規制委:サウステキサスプロジェクト増設計画の最終安全評価報告書完成
米原子力規制委員会(NRC)のスタッフは10月1日、東芝が参加しているサウステキサスプロジェクト(STP)原子力発電所3、4号機増設計画の建設・運転一括認可(COL)審査において、最終安全評価報告書(FSER)を完成したと発表した。スタッフはFSERの中で、「テキサス州ベイ・シティ近郊のSTPサイトにおける増設炉の建設・運転には、COL発給を妨げるような安全上の側面は見当たらない」と断言。同増設計画にともなう環境影響については、すでに2011年3月に最終環境影響声明書(FEIS)を発行済みであることから、安全性と環境影響両面の評価作業は概ね完了した。FSERとFEISは年内にもNRCの公聴会にかけられる予定で、NRC委員はこれらの報告書がCOL発給に必要な所見を支持する内容であるか見定めた上で、発給承認に関する票決を行うことになる。
出力135万kWのABWR、2基の建設を想定したSTP増設計画のCOL審査申請書は、2007年9月にSTP発電所の運転会社がNRCに提出。東芝は2009年に同計画のエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約を獲得しており、日本企業として初めて米国に原子炉を輸出することになった。東芝はまた、米NRG社が増設計画のプロジェクト会社として設立したNINA社に12%出資参加。NINA社は2011年1月にCOLの筆頭申請者となったが、同年3月の福島第一原子力発電所事故を受けてNRG社が増設計画への投資打ち切りを決定したため、COL審査を継続する費用は東芝が負担していた。
同増設計画で採用予定のABWRは米国で建設可能な標準設計の1つとして、すでに1997年にNRCから認証(DC)されている。また、同増設計画の安全性を独自に審査していたNRCの原子炉安全諮問委員会(ACRS)も今年2月、S.バーンズ委員長に宛てた書簡報告の中で、「ABWR設計と建設サイトは耐震性の再評価や設計外事象に対する影響緩和戦略など、福島第一事故後の短期タスクフォース勧告に基づく要件を満たしている」として、FSER発行後のCOL発給を勧告していた。
しかし、米国では現在、外国企業が原子力発電施設を所有・管理・支配することは許されておらず、NRG社が投資打ち切りを決めた以上、新たな米国籍企業から財源を確保する必要がある。また、STP発電所が立地するテキサス州は安価なシェールガス・ブームに沸いており、原子炉の新設には極めて不利な状況。NINA社のM.マクバーネット社長兼CEOも、「増設計画を実行に移すかは市場状況によって決める」とコメントしたと伝えられている。