WH社:米エネ省の新型原子炉概念開発プロジェクトに鉛冷却高速炉(LFR)を提案
東芝傘下のウェスチングハウス(WH)社は10月8日、より高いレベルの安全性と柔軟性、手頃な価格を備えた革新的な鉛冷却高速炉(LFR)を米エネルギー省(DOE)と共同開発していきたいとの抱負を明らかにした。DOEが7月末に公募した、産業界とのコスト分担型・新型原子炉概念開発プロジェクトにLFRで申請したもので、同提案が採用されれば2035年頃を目処に同技術の実証を行うことになる。
DOEのプロジェクトでは、クリーン・エネルギーの技術革新を一層加速するという目標の下、産業界からの提案1件につき、複数年にわたって合計4,000万ドルの研究開発・実証資金を米政府が提供。提案企業からも分担金として150万ドルの投資を求める内容だが、運転性能や安全・セキュリティ、経済性、核拡散抵抗性を大幅に高める可能性のある、新しい原子炉概念への投資を増強する最初のステップという位置付けになる。産業界の提案の中から2件を選定するため、申請書の提出期限を10月5日に設定していた。
WH社のLFRプロジェクト・チームは国立研究所や大学、民間部門から、先進的なLFRの設計や商業化に不可欠の専門的知見を有するメンバーが参加。第4世代の原子炉技術を発展させるとともに革新的なWH社製燃料を組み合わせ、最悪な経済環境下においても競争力を有する第5世代の原子炉創出を目指したいとしている。
WH社によると、次世代の原子力発電所は比類ない性能と安全性を有する一方で、発電コストが最も安い技術とも競合可能でなければならない。同社のLFRは、事故耐性燃料としての優れた性能を持つ同社製の最新型核燃料など、革新的な技術を基盤としたものになる予定。冷却材として鉛を用いることは原子炉の安全性を一層高めるだけでなく、その他の技術より高い運転効率や安い建設コストによって経済的価値も最大になるとした。また、同社製LFRは発電のみならず、水素生産や海水脱塩にも応用が可能。さらには、その負荷追従能力によって、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの利用を促進する一助にもなると強調している。
LFRはDOEが2000年に提唱した「第4世代国際フォーラム(GIF)」で、2030年までの実用化を目指す6つの対象設計の1つに選定されている。冷却材配管が腐食するなどの欠点がある一方、中性子の吸収量や廃棄物の発生量が少ないほか、ボイド係数が負であるといった長所があり、ロシアでは政府の目標プログラム「2010~15年、および20年までの次世代原子動力技術」の1つという位置付け。すでに2014年9月に、出力30万kWのパイロット実証炉「BREST-300」の詳細設計が完成し、セベルスクでの建設が計画されている。また、出力10万kWの鉛ビスマス冷却・高速実験炉「SVBR-100」の建設計画も、ディミトロフグラードの国立原子炉科学研究所(RIAR)隣接区域で2017年の発電開始を目指して進展中である。