イランの核開発問題を巡り採択された包括的共同行動計画(JCPOA)が発効

2015年10月20日

 欧州連合(EU)の理事会は10月18日、イランの核開発問題を巡り国連安全保障理事国5か国とドイツ(P5+1)がイランと最終合意した「包括的共同行動計画(JCPOA)」の国連安保理承認から90日が経過し、同計画が発効する「採択日」を迎えたことを表明するとともに、EUによる関連の対イラン経済・金融制裁をすべて解除する法律を採択したと発表した。同法律では、JCPOAで合意済みの核関連対策をイランが実行したことを国際原子力機関(IAEA)が検証した上で、今後設定される「実施日」においてのみ発効することを規定。イラン議会も13日付けでJCPOAを実行するための法律を承認しており、欧米諸国それぞれがイランへの制裁解除に向けて準備作業を始めたことを明らかにしている。IAEAは現在、イランと合意済みの「ロードマップ」に沿って、イランにおける過去から現在までの原子力プログラムに軍事的側面が存在した可能性を検証中。12月15日までに最終評価をIAEA理事会に提示する予定であるため、「実施日」は年末から来年1月頃になるとの見方が有力だ。

EUのモゲリーニ上級代表(=左)とイランのザリフ外相©イラン外務省

EUのモゲリーニ上級代表(=左)とイランのザリフ外相©イラン外務省

 この問題を巡る協議ではEUが調整役を務めたことから、同じ日にEUのF.モゲリーニ上級代表とイランのJ.ザリフ外相は共同声明を発表した(=写真)。この中で両者はまず、「採択日」がJCPOAを実行に移す重要な節目になったことを強調しており、JCPOAで設定された日程どおり、イラン側が核関連の誓約を全面的かつ実質的に果たしていく行動を開始する一方、EU側が制裁解除に向けた法律を採択したことを明記。米国も同日から、IAEAが検証を終える「実施日」に法定の制裁を停止できるよう行動を開始しており、関連する執行命令の停止を含め、適切な追加措置を指示しているところだとした。また、JCPOAの実行に向けた準備を一層進展させるため、政務局長級の「共同委員会」の初会合を19日にウィーンで開催すると明言。関係国すべてが可能な限り早期のJCPOA活動開始を強く誓約しており、このために必要なすべての準備作業を進める考えであることを明らかにしている。

 米国でも同日、エネルギー省(DOE)のE.モニッツ長官が声明文を発表した。JCPOAの発効を受けて、イランが今後、原子力プログラムを縮小するための実質的かつ検証可能なステップを踏み出し、これを厳しい検証・監督体制下に置くことになったという事実に言及。中でも、アラクにある研究用重水炉では、カランドリア管を撤去して稼働不能にする再設計作業が行われることから、核兵器の原料になり得る物質の除去などでDOEの専門家が米国の支援努力における主導的な役割を果たすとした。また、この件に関する主旨声明を米国、中国、イランの間でとりまとめており、DOEと中国原子能機構(CAEA)がP5+1とともにEUの「アラク最新化作業グループ」の共同議長に指名されたことを公表。数週間以内に同グループの初協議が行われるとした。この最新化プロジェクトにおいては、その他のJCPOA参加国からも支援を得つつイラン原子力庁(AEOI)がオーナー兼管理者の役割を担う一方、CAEAが同作業グループを代表してAEOIとの筆頭連絡調整係を務めることになっている。