アルゼンチン:国内4基目と5基目の原子炉建設を巡る中国との交渉で合意
アルゼンチン計画投資省は10月31日、国内4基目の原子炉となるアトーチャ原子力発電所3号機の建設計画について、使用技術と商業契約に関する中国核工業集団公司(CNNC)との交渉が完了したと発表した。出力約80万kWの加圧重水炉(PHWR)を1基建設するための契約条件で合意したもので、両者は近く正式調印することになる。計画投資省はまた、アルゼンチン5基目の原子炉として、同国初の大型軽水炉を導入する協力枠組の協定文言でCNNCと合意に達し、仮調印したことを明らかにしている。同国ではアトーチャとエンバルセの両原子力発電所でPHWRがそれぞれ2基と1基稼働中だが、近年はこれらのPHWR路線と並行して軽水炉の導入を検討中。出力2.5万kWの小型PWR原型炉を独自開発する一方、商業規模の軽水炉については、ロシアが提案したロシア型PWR(VVER)を4基目に採用することも検討していた。しかし、アルゼンチン政府は最終的に4基目をPHWRに決定。ロシアからの導入炉は6基目とする判断を下し、今年4月にロシア政府と建設協力の枠組設置で了解覚書を結んでいる。
今回決着した交渉は、2014年7月に両国がアトーチャ3号機建設協力に関して調印した政府間協定に基づき行われていた。同年9月にアルゼンチン国営原子力発電会社(NA-SA)とCNNCは同計画の協力枠組協定を締結しており、CNNCが総工費58億ドルの同計画に対して20億ドル相当の長期的財政支援として技術支援や機器・サービス、資機材等を提供する一方、NA-SAは同計画の所有者兼アーキテクト・エンジニアとして準備作業から設計、建設、起動、運転まで行うと決定。今年2月に計画投資省は、2014年の政府間協定が正式に批准されたと発表している。3週間に及んだ今回の集中交渉の結果、NA-SAとCNNCは3号機建設に向け、コンソーシアムを創設することで合意。機器類の7割以上をアルゼンチン企業が供給することを確認したほか、中国側は同計画への資金調達を決定するため、中国国内の金融機関との交渉を進めることになった。
なお、CNNCは今年2月に「アルゼンチンにPWRを共同建設するための両国政府間協力協定」に調印した際、CNNCと中国広核集団有限公司(CGN)双方の第3世代PWR設計を融合して開発した「華龍一号」設計の対南米輸出に道を拓くものだと説明しており、アルゼンチンの5基目には同設計が提案されると見られている。