米規制委:設計外事象による過酷事故の影響緩和規則案でパブコメ
米原子力規制委員会(NRC)は11月13日、原子力発電所で設計基準外事象による過酷事故が発生した際の影響緩和策に関する規則を提案し、来年2月11日までの予定でパブリック・コメントに付した。福島第一原子力発電所事故の教訓からNRCタスクフォースが提案した重要勧告のいくつかを統合して作成したもので、2012年3月にNRCが同事故後初めて、国内原子力発電所向けに発令した規制要件に基づく内容。同日付の連邦官報にも掲載済みで、米国内のすべての商業炉と今後建設される原子炉、および閉鎖済み原子炉が適用対象となっている。NRCスタッフとしては2016年12月に同規則の最終版を委員に提示し、発電所毎に多少のバラツキはあっても約2年後には有効としたい考えだ。
商業炉向けの規則としてNRCは、以下の点を要求。すなわち、(1)すべての交流電源が喪失した発電所内で、原子炉と使用済み燃料貯蔵プールを冷却し、格納容器を温存するための要員と手段の維持、(2)過酷事故後も、使用済み燃料貯蔵プールの水位計測が可能な信頼出来る機器を維持、(3)事故時の指揮統制や演習・訓練など、総合的な対応能力を義務付ける要件の設定、そして(4)発電所内における緊急時対応能力に関する要件の強化--である。
NRCによると、これらの規則は公布済みの2つの命令、「事故影響の緩和戦略(EA-12-049)」と「使用済み燃料貯蔵プールへの改良型水位計設置(EA-12-051)」における要件を各原子力発電所に適用する内容で、これらの命令はすでに全米の発電所で実行されている。しかし、今回提案した規則は、タスクフォースが提示したその他の勧告にも対処。例えば、(1)発電所が全体的に首尾一貫した戦略を維持しつつ異なる緊急時対応手段への移行が円滑に進められるよう基準を設定する、(2)複数の原子炉、あるいは原子炉と使用済み燃料貯蔵プールが関わる事象にも対処できるよう緊急時対応要件を強化する、(3)オンサイトとオフサイトのコミュニケーションを改善する、(4)複数の原子炉が関わる事象に対処できるよう発電所スタッフを拡充する--などに対応している。また、同規則には各発電所で再評価した地震と洪水による災害情報も統合。これにより、規則要件を満たすために使われてきた影響緩和戦略は、これらの災害に直面した際にも利用可能でなければならなくなった。
NRCはまた、同規則にいくつかの変更も加えており、発生確率が極めて低い過酷事故時に使用する管理ガイドライン(SAMGs)を自主的に継続使用するよう発電所に指示。各発電所ではSAMGsを常に最新に保ち、これをその他の緊急時対応ガイドラインとも統合して文書化する一方、NRCは原子炉監視プロセスを通じてSAMGsを定期的に監督する。さらにNRCは、新たな原子炉申請者に対して提案していた設計要件を規則案から削除。その代わり、新規の原子炉は既存の原子炉で適用されているのと同じ、性能ベースの基準に従うことになった。
こうした活動により、NRCでは福島第一事故で学んだ教訓を恒久的なものとすることを目指しており、今回提案した規則により、米国の原子力発電所は設計の想定よりも一層強固になるとの考えを示している。