NUMO:フランスの地層処分計画に関する講演会を開催

2015年11月16日

NUMO2 原子力発電環境整備機構(NUMO)は11月12日、外務省の「原子力エネルギーに関する日仏委員会」に参加するため来日していたフランス放射性廃棄物管理機関(ANDRA)のP.-M.アバディCEOを講演者として招き、同国で進展している高レベル放射性廃棄物(HLW)深地層処分施設プロジェクトについて経験を披露してもらう会合を都内で開催した。日本ではNUMO設立後15年を経ても処分施設の受け入れ自治体が決まらない一方、フランスでは建設候補エリアが決定し、近郊の地下研究施設で岩盤の研究調査を実施中。2020年代後半に地層処分施設の操業試験を行い、2030年代に操業許可が得られるよう、2018年の事業許可申請を目指している。社会構造や人口密度などで日本とは事情が異なるものの、学べる点も多々あるということで国内関係者の関心は高く、160名以上が参加する盛況ぶりとなった(=写真)。アバディCEOの講演概要は以下のとおり。

「CIGEO」プロジェクトの概要
 フランスでは、東部のムーズ県にある地下500メートルの粘土層に1万立方メートルのHLWと7万立方メートルの長寿命中レベル廃棄物(LLILW)を少なくとも100年間、回収可能貯蔵する「CIGEO」施設の建設を、約135億~165億ユーロの予算をかけて計画している。地上施設としては2つの施設を建設予定で、1つは廃棄物パッケージを受け入れ、管理し、地下への搬送に向けて準備するためのもの。もう1つは作業員の移動や物質の搬送に使う縦坑など、非原子力施設となる。

 サイトの選定作業は1991年の調査法(バタイユ法)に基づいて始められ、調査や関連研究、公衆との討論、法律上の段階的手続で24年を費やした。しかし、地層処分というプロジェクトは国や地方の関係者だけでなく、廃棄物発生者、研究開発機関、多様な評価者、一般公衆といった多くのステークホルダーが関わることから、意思決定プロセスは複雑にならざるを得ない。また、科学技術から人文・社会科学まで幅広い観点で取り扱う必要があるため時間がかかる。サイト選定におけるANDRAのアプローチは非常に漸進的で、30を超える候補地の中から地質学的な情報に基づいて8地点を政府に推奨。さらに社会・政治的な基準を考慮して4地点を最終的な調査の実施場所に選定した。このうちの2地点を統合したのがムーズ県とオートマルヌ県にまたがるビュールの粘土層で、同地に建設した地下研究施設で観察・測定したのと同様の地質を持つ250平方キロメートルのエリアを選定。その後、同エリア内のムーズ県側に位置する30平方キロメートルの圏内に絞り込むという手法を取っており、この圏内でCIGEOを建設することが2010年に決定した。

 バタイユ法はANDRAが科学技術的な研究を実施する期間として15年間を規定。このため、対象地層に関する詳細な情報を得るためにANDRAは1999年末からビュールで地下研究施設を建設し、これまでに1.5キロメートルの試験坑道を掘削してデータの取得を行った。同施設はまた、一般公衆やその代表者にANDRAの活動を見てもらうツールとしても役立っており、地域とのコミュニケーションを深める重要手段となっている。同施設では科学技術的な実験に加えて、技術的な実証を行うための作業も拡大。同施設を活用して、ANDRAはCIGEOの概念設計の段階で、物理的プロセスをモデル化するための科学的試験研究を多数実施。予備設計段階では施設の建設や廃棄物パッケージの輸送に関する技術的試験を集中的に実施した。現在は詳細設計を進めている段階で、この中で産業化のための技術開発と試験を行っている。

プロジェクトにおける「可逆性」
 プロジェクトの管理アプローチとして、ANDRAは「可逆性」を重視している。この概念はこれまで、廃棄物パッケージの回収という技術的な意味で使われてきたが、ここでは処分場の段階的かつ管理された実現を可能にする管理アプローチという意味合い。1世紀以上の操業を見込む施設であるため、建設工事は様々な理由から漸進的であることが要求される。ANDRAはCIGEOの事業許可申請を2018年に予定しているが、その時点で処分場のすべての側面において技術的解決策を提示する必要がある一方、将来的な処分場の進歩を可能にするオプションもオープンにしておかねばならない。この関連でANDRAは2014年5月、操業期間である120年間に相当する4~5世代の人々を巻き込むような意思決定は合理的ではない、そうした意思決定を可能にするため漸進的な意思決定が必要、--などの提案を行った。

 しかし、ある段階から次の段階に移動していくことで廃棄物パッケージを処分状態から回収できる可能性は非常に低くなり、コストも上昇。一方で、処分場全体の閉鎖に向けて、長期間の受動的安全性は高まっていくため、両方を天秤に掛け、技術的な施策や管理上の施策を使って可逆性の原則を実現しなければならない。将来の必要な時期に正しい決定が行えるよう、適正な水準の情報公開に基づいて社会が制御し、決定を行うのが唯一の方策とANDRAは考えている。