イラン:包括的共同行動計画に基づき濃縮ウラン9トンをロシアに売却へ
イラン国営通信は11月24日、イラン原子力庁(AEOI)のA.サレヒ長官の発言として、濃縮度4%のウラン9トンをロシアに売却する一方、ロシアからは天然ウラン140トンを輸入することになったと発表した。国連安全保障理事国5か国+ドイツと7月に合意した「包括的共同行動計画(JCPOA)」に則って行われるもので、ロシアのイランに対する原子力関連機器と資機材の取引禁止措置はもはや、同国からの濃縮ウラン輸入に適用されないとする政令にロシアのV.プーチン大統領が署名したことで実現可能になった模様。JCPOAでの合意事項に基づいて、今後イラン国内の低濃縮ウラン在庫量は300キログラムまで削減される予定。また、国内2箇所のウラン濃縮工場からの遠心分離機撤去も進展中で、国際原子力機関(IAEA)が理事会用に作成した報告書によると、ナタンズとフルドウの合計で約19,000台設置されていた遠心分離機のうち、約4,500台が11月15日までに撤去済み。イランは国連安保理と欧州連合、米国による決議や制裁の解除に向け、JCPOAでの合意事項の履行を着実に進めていることを印象付けている。
ロシアのV.プーチン大統領は23日にイランを訪問し、同国のH.ローハニ大統領と原子力の平和利用を含むさまざまな分野における両国間の協力強化で合意した(=写真)。サレヒ長官によると、JCPOA交渉期間中もロシアとの協力関係は良好で、プーチン大統領は23日に、イランとの原子力協力拡大における制約や条件を解除する政令に署名。同じ日にモスクワで公表された同政令では、イランに対する機器と技術の販売やイランからの濃縮ウラン輸入、および原子力関連分野での共同投資について制限の解除が明記されたと述べた。また、イランが研究目的の安定同位体を生産できるよう、ロシアが生産設備の改修も支援することになったと説明。イランとしてはさらに、ブシェール原子力発電所で必要な核燃料を確保するため、ロシアの許可を受けてブシェール原子燃料複合施設の建設を計画していることを明らかにした。ただし、これらの制限すべてが解除されるのは、イランがJCPOAの合意事項を履行していることが確証された場合に限るとみられている。一方、ロシア大統領府も23日、原子力分野におけるイランとの互恵的な協力関係を継続していくと発表しており、ロシアの支援により1号機が稼働中のブシェール発電所では、すでに2、3号機の建設に向けた作業が始まったと断言。JCPOAで承認された原子力プログラムの範囲内でイランの活動に最大限の支援を提供していくとしたほか、安定同位体の生産を可能とする設備改修に力を貸すとの考えを示している。