IAEA:緊急時の準備と対応の強化で新たな安全要件
国際原子力機関(IAEA)は11月27日、原子力災害に対する「緊急時の準備と対応(EPR)」を強化するための、新しい安全要件を公表した。IAEAの安全基準に含まれる「一般安全要件(GSR)」の第7巻にあたるもので、IAEAのほかに経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)や国連環境計画(UNEP)、世界保健機関(WHO)など13の国際機関が後援した。福島第一原子力発電所事故の教訓も含め、2002年に現行版を発行して以降の教訓をすべて盛り込むとともに、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告も考慮しており、緊急時管理システムなどEPRにおける様々な側面で要件を強化。加盟各国はこれに基づいて、原子力発電や放射線源を扱う場所で安全な操業を行うための各々のEPR枠組を一層強化することになる。発効期日については、加盟国が同基準の導入を決めた際の日程通りとしたものの、可能であれば要件公表日から1年以内が望ましいとの見解を表明している。
新要件の詳細は、IAEAが11月16日から20日までウィーン本部で開催した「GSR第7巻に関する地域間ワークショップ」の席で、IAEA緊急時対応センター(IEC)のJ.-F.ラフォーチュン調整官が説明した。それによると、新要件は原子力発電や放射線による緊急時の管理システムや防護戦略のほか、様々な危険状況に応じた緊急時対策による回復力、作業員や支援者の防護、バウンダリを越える緊急時の協力、といった面で要件を強化。全般的要件の具体例としては、EPRにおける責任と役割を明確に特定し、規制当局や運転機関に明確に割り当てるよう各国政府に求めているほか、EPRで段階的アプローチを取る基盤とするため、危険度評価の実施を徹底すべきだとした。また、関連する国際機関の責任としては、緊急時の対策や対応行動を手配・調整すべきだと明記している。
新しい安全要件について米エネルギー省(DOE)の担当局長は、「国内的、地域的、国際的にもリンクした、効果的なEPRの枠組が重要だ」と指摘。対応システム間で十分調整され、調和の取れたものにするべく、各国が近隣諸国と協議する必要があると述べた。IECの緊急時対策担当官も、新たな要件は今後10年以上にわたり、加盟各国が国内の緊急時対策を整備・強化する上で主要な参照文献であり続けると強調。加盟各国の国や地域の政府、緊急時対応機関、運転組織、規制当局、その他の関連国際機関が活用できるよう意図した点に触れた。IAEAはまた、EPRは国毎に責任を負うべきものではあるが、各国が国際的な基準に沿った対策枠組を国内で策定する際、IAEAが関連プログラムを通じて加盟国を継続的に支援してきたと説明。新しい要件は、緊急事態に直面した加盟国がこれに対応する統合システムを策定・強化し、IAEAの支援の下でどのように同要件を達成するかを導けるよう設計されていると明言した。