アルゼンチン:ガス拡散法の低レベル・ウラン濃縮工場で開所式

2015年12月3日

 アルゼンチン政府は11月30日、ブエノスアイレスの南約1,000キロメートルに位置するリオネグロ州ピルカニエウ複合技術施設(CTP)で、ガス拡散法による低レベル・ウラン濃縮工場の開所式を開催したと発表した。生産能力については明らかにしていないが、CTPでは1980年代に20トンSWU/年程度のパイロット濃縮施設が稼働。同施設のインフラ設備と機器を最新技術で更新して、新工場として再生させたもので、最終的な生産能力として3,000トンSWUを目指すと見られている。同国では現在、試運転中の1基を含め3基の加圧重水炉(PHWR)が稼働中なのに加え、4基目のPHWRと5基目になる軽水炉の建設計画で中国と協力の枠組協定を締結済み。6基目の建設についてもロシアと協力枠組の設置で覚書を締結しており、これらへの燃料確保を含むエネルギー供給の自立と、他国に依存しない核燃料サイクルの完結を目標に、同国が濃縮レベルを上げていくこと、レーザー技術による濃縮についても実験中であることを明言した。

©CNEA

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 開所式には同国のC.フェルナンデス・デ・キルチネル大統領(=写真左端)や計画投資省のJ.デビド大臣、地元のリオネグロ州知事とバリローチェ市長、アルゼンチン原子力委員会(CNEA)の幹部らが出席した。大統領は祝辞の中で、新たな濃縮工場によってアルゼンチンが「濃縮ウランのサプライヤー」というかつての立場を取り戻すことになると指摘。アルゼンチンの自治と科学開発を制限するような外圧は決して容認しないとする一方、その理由として、同国のウラン濃縮が爆弾製造を意図したものではないと世界中に保証している点を挙げた。計画投資省も、CNEAが管理運営する同工場の改修・近代化に同省が2億5,000万ペソ(約32億円)を投資したという事実に言及。新たな設備として、材料の積み卸しシステムやフッ素生産工場、廃液処理施設などが付加されたが、その目的は原子力発電所用の燃料を確保するとともに、国内13の核医学センター(このうち11か所は建設中)での利用である点を強調した。

 計画投資省の発表によると、インドが核実験を行った1974年当時、主要な濃縮ウラン・サプライヤーであった米国がアルゼンチンへのウラン供給停止を決定しており、これを契機に同国は燃料供給の自立を目指してCTPの建設に着手した。CTPで稼働していたパイロット濃縮施設は1990年代になって事実上、解体されたが、その後2006年に現大統領の夫であるN.キルチネル前大統領が提唱した国家的な原子力開発の再活性化計画がスタートしており、CTPでも2010年から機器の改修や技術専門スタッフの拡充などを開始。2014年には実験室レベルでの濃縮活動を始めていたと説明している。