米規制委:80年間の運転期間延長申請に備え審査ガイダンスの策定準備
米原子力規制委員会(NRC)は12月17日、商業用の原子力発電所で60年を超える運転期間延長申請書を審査する際、ガイダンスとなる2つの文書案をパブリック・コメントに付すと発表した。米国では運転開始当初に許される運転期間40年に加えて、20年ずつ認可の更新が可能だが、更新回数を制限する規定はない。安価な天然ガスの台頭や巨額の資本費がネックとなって新規の原子炉建設が進まないなか、運転期間の延長は原子力発電設備を継続利用していく上で比較的経費がかからない選択肢の1つ。今年11月にドミニオン社の子会社が米国で初めて、2度目の運転期間延長申請によりバージニア州サリー原子力発電所(80万kW級PWR×2基)を80年間継続運転する意向をNRCに通達したことから、NRCとしては2019年の申請書受理に備えてガイダンスの策定準備を始めたもの。
今回パブコメに付された文書は、「2度目以降の認可更新用に得られた経年化に関する一般的な教訓(GALL-SLR)報告書」と「原子力発電所で2度目以降の認可更新申請書を審査するための基準見直し計画(SRP-SLR)」の案文。運転期間の延長では原子炉の安全運転と周辺環境の防護を延長期間中も継続的に確保していけるかが焦点となるため、NRCは1度目の運転期間延長に関する同様の文書に基づき、原子炉を80年間運転可能にする経年化管理プログラムなどをこれらの文書に明記した。最終決定されれば、NRCスタッフは2度目以降の認可更新申請書の審査にあたり、これらに示された技術と方法が活用可能になる一方、事業者側も申請書を準備する際のガイダンスとして利用できる。コメント募集の具体的方法としてNRCは、2016年1月と2月にメリーランド州のNRC本部で計3回の公聴会を開催予定。この機会にガイダンス文書案を提示し、質問やコメントを受け付ける。また、12月22日付けの連邦官報で文書案を公表した後は、連邦政府の規則制定関係ウェブサイトでも、2016年2月末まで書面によるコメントを募集するとしている。
これまでに米国内の商業炉約100基のうち、81基の原子炉(このうち2基は早期閉鎖済み)が1度目の運転期間延長により合計60年間の運転継続を許可された。NRCでは現在さらに、13基の申請が審査中となっている。