中国:2015年末から2016年初頭にかけて3基が営業運転開始、2基が正式着工
2015年末から2016年の初頭にかけて、中国で新たに3基の原子炉が営業運転開始条件を達成したほか、2基の建設プロジェクトが正式に始動したことが明らかになった。これにより、同国の商業用原子炉は30基、2,800万kW台に到達。2014年末以降の約1年間で韓国とロシアを抜き、米国、フランス、日本に次ぐ世界第4位の設備容量となっている。建設計画については、中国が独自ブランドの輸出用・第3世代設計と位置付ける「華龍一号」の実証炉プロジェクトが含まれており、世界の原子力市場への進出という同国の原子力発電開発における目標は益々現実味を帯び、拡大の一途を辿りつつある。
営業運転開始:昌江1号機、防城港1号機、陽江3号機
まず、中国核工業集団公司(CNNC)が同国最南端の海南島で2010年から建設中の昌江原子力発電所で、2015年12月26日に1号機が営業運転を開始した。同炉はCNNCが自主開発した65万kWの第2世代PWRで、同型の2号機の建設作業も順調に進んでいる。これら2基への総投資額は200億元(約3,600億円)にのぼり、国産化率は82%に到達した。2基とも完成すれば、海南省における電力供給量の3分の1が発電可能になり、同省のエネルギー供給と社会経済的な発展を強力に後押しすることができるとCNNCは強調。すでにⅡ期工事となる3、4号機の建設準備作業も進展中だと明言した。
正式着工:防城港3号機、田湾5号機
同設計の輸出についてはすでに、パキスタンで2015年8月、カラチ原子力発電所2号機として本格的な建設工事が始まっており、「華龍一号」を国外で建設する最初の例となった。また、同年10月に習近平国家主席が英国を訪問した際、EDFエナジー社が同国で将来的に建設するブラッドウェルB原子力発電所の2基に採用することで、同社とCGNが契約前文書に原則合意。英国仕様の「華龍一号」を英国の設計認証審査にかけるため、両社が設立する合弁企業が審査関係活動の管理を行うことになっている。 このほか、CNNCが12月27日、江蘇省の田湾原子力発電所で5号機(=右写真)(100万kW級PWR)の原子炉建屋部分にコンクリート打設を行った。2015年末の国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP21)でパリ協定が採択されたのを受け、中国の国務院・常務会議は12月16日、CO2の排出削減目標を達成するため、田湾5、6号機を含む合計4基の原子炉建設を承認。5号機の着工により、同発電所拡大プロジェクトは正式に始動したことになる。同発電所で稼働中の1、2号機と建設中の3、4号機では、100万kW級のロシア型PWR(VVER)を採用したのに対し、5、6号機では第3世代の安全特性を有する設計としてCNNCが開発した「ACP1000」を採用。2011年初頭に準備作業の開始が承認されていたが、福島第一原子力発電所事故の影響により開発は大幅に遅延していた。