中国:CNNCとCGNが「華龍一号」設計の国際展開促進で合弁事業体設立へ
中国で原子力発電事業の実施資格を有する3大企業のうち、中国核工業集団公司(CNNC)と中国広核集団有限公司(CGN)は12月30日、双方の第3世代設計を統合して開発した「華龍一号」を世界の原子力市場に大々的に売り込んで行くため、登記資本金5億元(約90億円)の合弁事業体「華龍国際核電技術有限公司(略称:華龍公司)」を折半出資で設立すると発表した。「華龍一号」は中国が知的財産権を有する独自ブランドの輸出を主目的とした設計であり、その開発を継続的に行うとともに国内外で知的財産権と関連資産を共同管理するという戦略の積極的な展開が華龍公司設立の狙い。2014年8月に両社が結んだ技術統合合意に基づくもので、両社の力を結集して同設計を一層多くの国や地域で開発することを目指した今回の合意文書は、北京で国家能源局(NEA)のヌル・ベクリ局長が同席して調印された(=写真)。同設計の実証炉建設プロジェクトはすでに中国国内で複数、始動したほか、海外でも採用炉が本格着工するなど、原子力輸出を国家戦略に据えた中国政府の方針は実現に向けて着実に進展している。国防産業部門から発展してきた国有大型企業のCNNCは、核工業部の分割により設立された。事業分野はウラン生産から核燃料製造、原子炉開発と設備製造、使用済み燃料の再処理まで多岐にわたる。中国初の商業炉となった30万kWの秦山Ⅰ-1原子力発電所の開発では圧力容器の供給を三菱重工から受けたものの、国産技術中心の炉型戦略で徐々に原子炉の規模を拡大。大型炉ではフランスの技術も導入してPWR技術のレベルを高めてきた。一方のCGNは、広東省を中心に原子力発電事業を展開してきたが、それ以外にも事業を広げるため2013年に社名を改称。フランスからの輸入で大亜湾原子力発電所を建設後、同技術をベースにPWR開発を進めていた。
両社がそれぞれ開発した第3世代設計には類似点も多いことから、2013年初めにNEAの指導により、CNNCの「ACP1000」とCGNの「ACPR1000+」の一本化が決定。2014年4月に国務院・常務会議で「華龍一号」の実証炉建設が承認された後、8月には「華龍一号」の全体設計をNEAと国家核安全局(NNSA)の審査会が承認した。福島第一原子力発電所事故の教訓をフィードバックするとともに、安全系に動的と静的概念を組み合わせるなど、国際的に最も厳しい安全基準を遵守した設計だと両社は強調しており、過酷事故の発生防止と影響緩和が図られている模様。その具体的な実証炉プロジェクトとして、同年11月にCNNCの福清5、6号機への採用、12月にCGNの防城港3、4号機に採用することが決定した。このうち福清5、6号機と防城港3号機は2015年5月から12月までの間にすでに正式着工している。
海外輸出についてはCNNCが2015年5月の記者会見で、同設計の積極的な売り込みを約20か国で行っていると明言。実際、2015年8月にパキスタンで同設計を採用したカラチ2号機がCNNCの協力により本格着工したほか、英国でEDFエナジー社が計画中のブラッドウェルB原子力発電所に同設計を採用することで、CGNとEDFエナジー社が同年10月に原則合意した。また、アルゼンチンで5基目となる原子炉の建設計画についても、11月にCNNCがアルゼンチン国営原子力発電会社(NA-SA)と同設計を採用した協力の枠組協定を締結済みとなっている。