インド:原子力発電設備拡大に向けた諸外国との交渉が進展中と明言
インドの首相府は12月30日、内閣がオーストラリアとの2国間民生用原子力協定の実施協定を承認したのに合わせ、原子力発電開発関連で2015年中に進展した諸外国との交渉状況を紹介した。その中でウェスチングハウス(WH)社製AP1000を国内で建設するための交渉が2016年にも決着する見通しに言及したほか、ロシア製原子炉を増設する計画の実現に向け、ロシアとの共同行動プログラムに調印したと明言。インドは2032年までに総発電電力量の9%に当たる6,300万kWの原子力設備増強を計画するなど、中国と並んで大規模な原子力発電所建設が見込まれることから、諸外国との原子力貿易が急速に拡大している事実が浮き彫りになった。
首相府はまず、印豪原子力協定が2015年11月に発効していた点を指摘。増強中の原子力発電設備用として、ウラン埋蔵量で世界最大のオーストラリアからウランの輸入が可能になったことから、インドにおけるエネルギー供給が保証されるとの認識を示した。また、同年12月に日本の安倍首相が訪印した際、日印2国間の民生用原子力協定の締結で両国が合意し、5年に及んだ交渉がまとまったことを歓迎。こうした画期的展開は首相レベルの強力な取り組みにより実現したと述べ、N.モディ首相のリーダーシップを称賛した。
次に、2015年1月に米国のB.オバマ大統領がニューデリーでモディ首相と会談し、米印間の民生用原子力協力を本格的な実行に移す目処が立ったことを伝えた。両国間ではその後、原子力協定の実施協定が調印され、原子力サプライヤーに一定の賠償責任を盛り込んだインドの原子力損害賠償法関連では、政府系保険プールが設置されたと説明。事故時に事業者とサプライヤーの保護が可能になるなど、国際社会や国内の懸念は払拭されるとの見解を示した。インド西海岸のグジャラート州ミティビルディでAP1000を6基建設する計画に関しても、インド原子力発電公社(NPCIL)とWH社の商業交渉が2016年中に決着するとの見通しを表明した。
首相府はまた、フランス、ロシアとの民生用原子力協力にも触れ、マハラシュトラ州ジャイタプールで欧州加圧水型炉(EPR)6基の建設計画を前進させるため、仏アレバ社が2015年4月にNPCILと準備作業に関する予備エンジニアリング契約を、また、インドの大手エンジニアリング・建設企業であるラーセン&トゥブロ社とはEPRをインドで最大限国産化するための協力で了解覚書を結んだとした。2015年12月にはモディ首相が訪ロし、今後20年間にインドで最低12基のロシア型PWR(VVER)を建設するという2014年12月の両国合意を具体化する方向で、VVER技術の移転に関する共同行動プログラムに調印した。インドのクダンクラムでは現在、100万kWのVVERが1号機として2014年から稼働中であり、ロシア側の発表によると、2号機も数週間のうちに完成する見通し。同サイトでは近い将来3、4号機の建設を開始するほか、5、6号機増設計画の交渉も実施している。さらに、その他のサイトでも、ロシアの最新型120万kW級VVERを建設することになっていると明言した。
このほか首相府は、2015年4月にカナダと結んだ長期的なウラン購入契約に基づき、同年末には最初のウラン製品がインドに到着したことを強調。同様に、世界最大のウラン生産国であるカザフスタンとも、2015年7月にウランの長期購入契約を締結済みだと説明している。